さすが、イギリスといったところか。
二年ほど前、イギリスの大英博物館とオックスフォード大学のピットリヴァーズ博物館が共同で、あるウェッブサイトを立ち上げた。 その名は、Tibet Album –British photography in Central Tibet− (チベット・アルバム—中央チベットでイギリス人の撮った写真—)。 これはとても画期的なプロジェクトで、大英帝国の植民地官僚たち(Hugh Richardsonなどの学者も含む)がラサ滞在中に撮り続けた写真をウェッブ上に全面公開したものだ。 1920年から1950年までの30年間、しめて6,000枚以上にも及ぶ膨大なコレクションである。
今から一年半ほど前か。 オックスフォードのある学者が、このウェッブサイトの紹介がてらにラサにやって来た。 彼女は地元のある非公式の会合にも呼ばれ、このセンシティヴな写真群を見せながら、容赦ない「オックスフォード・イングリッシュ」で講演をしたのだった。 チベット人の聴衆が彼女の話をどれほど理解できたかは?だが、やはり写真は非常にパワフルである。 みなは食い入るように見ていた。 彼女はその講演の締めくくりに、「このサイト、いつまでラサで見れるかしら・・」と、独り言のようにつぶやいていたが、太っ腹当局のお陰で今でもラサからアクセスできる。
写真の一部をこの僕のブログで紹介するつもりで、一ヶ月ほど前に大英博物館に問い合わせてみたが、やはり著作権の関係でだめらしい。 しょうがないので、以下をクリックしたら、(僕が個人的に選んだ)写真が出てくるようにした。
薬王山の頂上から見たポタラ(今と違って広大な空間が広がっているポタラ周辺)
バルコルから見たポタラ(今のマキアミ・レストラン付近からだと思われる。)
ジョカン寺から出るネチュンの神託官 (傘の右下、僧侶に両脇から抱えられるのがネチュンの神託官。 昔はこの神託官の御告げにより政策決定されることもあった。)
写真のすぐ下には、誰がいつ、どういうカメラで撮ったか、などの細かい情報と、写っている事物の背景説明がある。 また、写真を拡大したり、自分の好きな写真をピックアップしてアルバムにするという作業もウェッブ上でできるようになっている。 すべて「英語」というのがネックかもしれないが、このサイトは我々を「在りし日のチベット」へと時空を超えタイムスリップさせてくれる。 最近チベットに関心を持ち始めた人から、研究者レベルまで楽しむことができ、完成度・エンターテイメント度という点で非常に優れているといえよう。 また、(ある種の打算とともに)大英帝国の歴史的責務の(一部)履行という点でも、評価できるかと思う。
話は変わるが、1910年代、カメラ片手にラサに三年間住んだ日本人がいることを、みなさんはご存知であろうか。 京都・西本願寺の僧侶、青木文教である。 僕が無知なだけかもしれないが、青木が撮った多くの写真が整理・公開され、我々に簡単にアクセスできるようになっているのだろうか。 国立民族学博物館の長野泰彦先生(チベット学)が、詳細な報告書にまとめられたことは知っているが、ウェッブ上で青木の遺産が体系的にアクセスできるような話はきいたことがない。 もし、西本願寺がこれらをウェッブ上で公開するならば、国内外での布教活動にもなるのではないだろうか。 いや、それ以上に、チベットと日本のつながりがイメージを通して我々に知れるところの価値は非常に大きいであろう。
Daisuke Murakami
PS 上記ウェッブサイトの一番上の右側にある”search”の欄に、英語でラサの地名や人名などを入れるとその写真が出てきます。 日本語は不可です。 以下、代表的なものの、英語のスペルです。
ジョカン寺(大昭寺) jokhang
セラ寺 sera
デプン寺 drepung
ガンデン寺 ganden
ポタラ potala
ダライ・ラマ dalai lama
1月11日
(ラサの)天気 ほぼ快晴
(ラサの)気温 −6〜7度 (先週に比べてたいぶ寒さが和らぎました)
(ラサでの)服装 厚手のジャンパーやコート、長ズボン。 日焼け対策は必須。 空気は非常に乾燥しています。 念のために、雨具は持ってきたほうがよいでしょう。