カナダ北西部に位置し、アラスカの隣、北極圏にも接するユーコン準州。“準州”といえども日本の約1.3倍ともいわれる広大な土地のほとんどは、まさに手つかずの大自然地帯で、氷河を抱いた山岳地帯や、ツンドラの原野がどこまでも続いています。
ユーコンの主役は野生動物
ユーコンに暮らす人口は現在でも約3万人足らずで、むしろこの地の主役はクマやカリブーなどの野生動物。自然あふれるカナダの中にあっても、息を呑むほどの圧倒的な大自然を堪能できる別格のネイチャーワールドといえるでしょう。
街から一歩出れば、クマやムース、なにかしらの大型動物に出会えることも日常茶飯事 というのが、ユーコンの魅力。ユーコン以外の北米の多くの国立公園では、動物が現れるとすぐに人だかりができたり、車が集まってくるため、動物たちはなかなか人がいる場所まで出てきませんが、ユーコンでは隠れもせずに堂々と闊歩している姿をしばしば見かけます。
人間よりもはるかに多く生息する動物たちと、ユーコン&南東アラスカエリアで出会える可能性が高い場所をご紹介いたします。
極北の大型動物
1.グリズリーベアー
グリズリーベアーは、内陸に住んでいる大型のクマで迫力満点! 彼らのほとんどの食べ物は植物と言われていて、肉食のイメージが強いクマとは反対です。らくだのような大きなコブが特徴的です。
2.ブラウンベアー
内陸性のグリズリーベアーに対し、海岸沿いに住んでいるグリズリーをブラウンベアといいます。ブラウンベアーは食べるものは夏と秋は主にサケで、栄養価の高い頭や腹を好んで食べています。体もグリズリーと比べ、少し大きくなります。時には親子連れでサケを追う姿もみることができます。
3.ブラックベアー
グリズリーよりも一回り小さなブラックベアー。木登りができないグリズリーに対し、ブラックベアーは簡単に木に昇ります。ブラックベアーといえども茶色の個体もいるため、グリズリーと見分ける際には骨格やサイズなどで判断する必要があります。
4.ドールシープ
野生の羊のドールシープ。世界で唯一の真っ白な体の野生の羊です。オオカミなどの天敵から身を守るため、崖に住んでいます。道路から見ると小さな点にしか見えないのですが、双眼鏡やスコープを使ってみると、オスは立派な角が生えているのが分かります。角には木の年輪のような跡がありますが、深い輪で1歳分。年輪を数えると、年がある程度わかります。
5.ムース
日本語ではヘラジカと言われ、世界最大の鹿と言われています。大きなものはオスですと800キロぐらいにもなるとか。毎年秋になると繁殖期を迎えるため、普段は単独で過ごしているムースたちが伴侶を求めて原野をさまよい、オスはハーレムを作ることもあるようです。立派な角を持ったオスのムースは迫力満点です!
6.カリブー
野生の鹿類の動物で、カリブーを家畜化したのがいわゆるトナカイとなります。野生のカリブーはツンドラのカリブーと森のカリブーと分かれます。ツンドラのカリブーは大きな群れを作り、15万頭ほどもいるグループもあります。ユーコンとアラスカの北極圏を大移動するポーキュパイン・カリブーは、写真家の星野道夫さんの被写体としても有名ですね。森のカリブーはツンドラのものより少し大きく、山や森の中を小さな群れで移動しています。
7.オオカミ
怖いイメージが先行しているオオカミですが、実はとても賢く人前に姿を現すことがほとんどありません。それでも道路際に出てくることもありますが、大抵は1頭だけの「1匹オオカミ」です。ユーコンでは比較的たくさんの数がおり、冬にはその足跡をよく見かけます。
8.マウンテンゴート
ドールシープと同様に、崖の上に住む美しい動物です。冬は寒い極北を耐え抜くため、長い毛を纏っています。子供を産む春になるころには、冬毛があちこちに落ちていたりしますが、先住民はこの落ちた冬毛を使ってブランケットを作りました。
9.ザトウクジラ
アラスカの海に住むザトウクジラは、夏になるとアラスカへとやってきて、冬にはハワイへと渡っていきます。大量のニシンなどの小魚を食べるクジラで、時折体ごとジャンプする「ブリーチング」や集団で泡を作ってニシン漁をする「バブルネットフィーディング」という行動でも有名なクジラです。
10.リンクス
カナダオオヤマネコとも呼ばれている極北に住むネコ科の動物で、耳に生える黒い毛と短いしっぽが特徴的です。シャイな動物であまり姿を現しませんが、野生のリンクスには威厳があり、その美しい姿は一度見ると虜になってしまいます。
極北の中~小型動物
11.ビーバー
ユーコン全土に点在していて、夏の間は愛らしい姿で泳ぐ様子を見かけます。ビーバーは鋭い歯で木を切り、木の皮や葉を食べて生きています。夏の間に冬の食料として、巣の前にたくさん切った木を貯蔵します。
12.コヨーテ
キツネとオオカミの中間程の大きさの動物。人間の住む環境に慣れることができるため、街のすぐ近くにも住んでいる動物です。元々は極北にはいなかった動物のようですが、温暖化のためか、最近はユーコンやアラスカでも姿を見る事が多くなりました。
13.レッドフォックス
北海道のキタキツネと同じ動物ですが、時折黒い個体などもいます。黒い個体と黄色の個体が混じったものは、色が半分ずつの「クロスフォックス」とも呼ばれています。人の生活の近くでも住む事ができますが、原野でも立派に自立して生きている動物です。
14.アカリス
小さく愛らしい動物で、一年中冬眠せずに森の中で暮らしています。夏はトウヒや松の実をせっせとかき集め、木の下や巣の中に貯蔵します。秋のキノコの季節には、キノコ狩りをすることでも知られています。
15.シマリス
北海道にいるシマリスの亜種で、一説ではアメリカ大陸からユーラシア大陸へ渡ったと言われています。アカリスよりも小さな体で、せわしなく動き回っています。
16.ホッキョクジリス
その名の通り、極北に住む地面のリス=ホッキョクジリスです。地面に穴を掘り、冬は体温を落として冬眠することで有名です。夏になると道路際にたくさん出てきて、立ち上がってこちらの様子をチェックしたりとかわいらしい姿を見せてくれます。
17.ナキウサギ
甲高い声を出す動物で、北海道にいるナキウサギの亜種と言われています。瓦礫の多い岩場に住む動物で、人間や天敵の動物が近づいてくると、甲高い声を出して岩の中に隠れます。
18.ヤマアラシ
トゲがある毛皮を纏っており、危険が迫ると身を丸めてトゲを立てて威嚇します。動物が襲うとトゲが抜ける仕組みになっており、極北では犬がヤマアラシのトゲだらけになって帰ってくるということもしばしばあります。
18.マーモット
ナキウサギと同様、瓦礫付近に好んで住む動物で、天敵がくると岩場の中に隠れてしまいます。大きな猫ほどの大きさで、岩の中から出てきたり、隠れたり姿をみるのは楽しいものです。
極北の代表的な鳥
19.ハクトウワシ
威厳のある鳥で、アメリカの国鳥にもなっています。春になると極北へと渡ってくる鳥で、夫婦で毎年ほぼ同じ場所に巣を構えて忙しい子育てを始めます。主に魚を捕る鷲で、木の枝から水に飛び込む様子は圧巻です!
20.ライチョウ
極北にはライチョウは何種類かいますが、一番数が多く有名なのはWillow Ptarmiganというライチョウです。夏には茶色い毛をまとい、冬になると真っ白な姿に変わります。日本のライチョウのように希少性はないため、現地の人の食料になることもあります。
21.ハクチョウ
春一番の5月に南から渡ってくる鳥です。極北にはツンドラ・スワンとトランペット・スワンがいますが、トランペットのような音を出すトランペットスワンはすぐ分かります。
22.フクロウ
極北にはフクロウが何種類かいますが、よく声をきくのはこのGreat Horned Owlという種類のフクロウです。長いミミがあり、「ホーホー」という声を出し、夜の間に活発に動いています。夏の白夜の季節は子育て忙しく、昼間でも狩りをしています。
ユーコンや南東アラスカの厳しい大自然で暮らす生き物たちの姿はとても勇ましく、野生動物との出会いは、時としてとても愛らしく感じる瞬間でもあります。
動物たちの姿を捕らえるのはなかなか難しい・・・
せっかく極北に足を運んだならば、これらの憧れの野生動物に出会いたい!という方も少なくないでしょう。ユーコンには野生動物が多く生息しているとは言え、個人で旅行をしても全く存在に気づかない動物や鳥たちがそこらじゅうにたくさん居るのも事実です。
彼らの居る場所や動物にも詳しい現地ガイドの上村さんと一緒に旅すると、「え?!あんなところに!」と、自分では気づかない野生動物達と出会える確率が格段に上がります。
鳥好き、動物好きの方には、ガイド付きツアーを強くオススメします!
ユーコンではドライブだけでも十分素晴らしい体験ができますが、さらにユーコンのトレイルを歩くことで、よりたくさんのすてきな動物たちに遭遇することができるでしょう◎
★素敵な動物写真と文章を提供してくださった上村さんのプロフィールはこちら
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上村さん同行ツアーはこちら!
【風の女子旅】極北のツンドラ紅葉を馬で往く
終了ツアー 2020/09/05(土)発 秋のユーコンを乗馬とキャンプでたのしむ7日間
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