ティカル遺跡にて:グラン・プラサを挟み対峙するⅠ号神殿とⅡ号神殿
9世紀頃まで中米で高度な文明を持ちながら、その後忽然と姿を消したマヤの人々。その理由にはいろいろな説がありながらはっきりしたことはいまだわかっておらず、しばしばマヤ文明は「謎」、とか、「神秘」、という言葉で語られます。
彼らの技術力の高さをうかがわせるのが彼らが放棄した大規模な巨石ピラミッド群です。メキシコ/グアテマラ/ホンジュラスを中心とした広い地域にマヤの遺跡が遺されておりますが、このページではマヤの集大成として考古学的注目を集める、グアテマラ北部のティカル遺跡、キリグア遺跡、首都近郊のカミナル・フユ遺跡、グアテマラから日帰りで行けるホンジュラスのコパン遺跡についてご紹介します。
ジャングルに広がる巨大な遺跡群 ティカル遺跡
スターウォーズの撮影で使われたⅣ号神殿からの絶景
グアテマラ北部にあるティカル遺跡は、マヤの遺跡の中でも屈指の規模を誇ります。遺跡の中には、ピラミッド型の神殿のほかに水路、道路なども張り巡らされていたことが分かっており、この遺跡が都市として発展したことをうかがわせています。見学では実際に、マヤの時代に整備された『白い道』(サクベ)を歩きます。ユネスコの世界自然遺産と文化遺産の両方に登録されているティカルでは遺跡だけでなく、遺跡全体を包むように広がった豊かな自然も大きな魅力。ジャングルの散策と、迫力満点のピラミッドをぜひお楽しみ下さい。
長い鼻で餌を探すハナグマ
サクベ(マヤ古道)を辿る
マヤの世界樹・セイバの木
遺跡で見かけるクモザル
荘厳なⅤ号神殿
鬱蒼としたジャングルの中に位置するティカル遺跡では、野生動物との出会いも楽しみです。長い鼻が印象的なハナグマ、手足と尻尾を器用に使って移動するクモザル、朝夕に大きな声で吼えるホエザルは、高い確率で観察することができるでしょう。また、ケツァールの仲間であるヒメキヌバネドリや、大きなくちばしが特徴のサンショクキムネオオハシ、美しい尾を持つアオマユハチクイモドキや、ピラミッドに営巣するアカハラハヤブサなど、ジャングルに棲息する多種多様な鳥達も見逃す事はできません。
ティカル国立公園内ロッジに宿泊!
ティカル遺跡を訪れるツアーでは、近郊の都市フローレスに宿泊することがほとんどですが、ティカル国立公園内に宿泊することで、遺跡やその周りの自然を十分に味わって頂くことができます。日帰りでは見ることのできない朝や夕方のティカルをお楽しみ下さい。夜はホエザル、朝方には野鳥の声を聞くこともできます。
美しいレリーフの石碑が建つ キリグア遺跡
キリグア遺跡の見どころ「巨大な祭壇」
キリグア遺跡の石碑
グアテマラ中部、広大なバナナ農園の中にキリグア遺跡はあります。この遺跡は歴代の王の姿を彫った石碑(ステラ)で知られており、遺跡の中には最大で12mにもなる巨大な石碑の数々が残されています。石碑で注目すべきはその側面に彫られたマヤの歴史。解読されたマヤ文字から王の功績など当時をしのばせる記述、マヤ暦の終末などマヤ史に関する様々な記述を見て取ることができます。
独特な世界観を持つ コパン遺跡
コパン遺跡の球戯場
グアテマラの東隣にあるホンジュラス。国境を越えて30分ほどでマヤ文明の重要な遺跡コパンに到着します。ここではマヤ文字のブロックを2,000個以上組み合わせて作られた神聖文字の階段や、地下世界を表すと言われる精巧な地下神殿など、マヤの遺跡でも特筆すべき発掘成果の数々をご覧頂くことができます。神殿を飾るレリーフにはコンゴウインコやドクロなどマヤ文明ならではの彫刻が残されており、その独特な世界観をより深く理解することができます。
浮き彫りが施された石柱が見どころ
遺跡内ではコンゴウインコが見られます
マヤ・アーチと呼ばれる迫り出しアーチ
復元されたロサリラ神殿
マヤ建築の特徴として、「古い建物を崩した上に新しい建物を作る」という点がありますが、コパンの10代王“月ジャガー”が建築したロサリラという神殿は、その後の時代にも取り潰されることなく、ほぼ完全な状態で地下から発見されました。コパン遺跡に隣接する石彫博物館では、その復元レプリカを目にする事ができます。当時、全ての神殿やピラミッドは、水銀朱や虫由来のコチニール色素で真っ赤に染められていたそうです。さぞや見事な景観だったのでしょうね。
ホンジュラスでの延泊もオススメ
コパン遺跡をじっくり楽しむなら、遺跡近郊のグアテマラ国境の町「コパン・ルイナス」に宿泊するのもお勧めです。グアテマラとはまた違った雰囲気を持つのんびりとした町並みの風景と、快適なリゾートホテルでの滞在を満喫していただけます。コパン遺跡への入場者が少ない朝一番に観光できるという点も魅力の一つです。
首都に残る紀元前の遺構 カミナル・フユ遺跡
地下で発掘作業が進む神殿の遺構
グアテマラシティの住宅地にあるカミナル・フユ遺跡は、紀元前4世紀から栄えた都市の跡だといわれています。残念ながら風化が早い粘土質の土壌のため、他の遺跡のように立派なピラミッドが残っている訳ではありませんが、日本の援助によって発掘作業が続けられており、その出土品は公園内の博物館に収蔵されています。
見事な彫刻が施された石柱
想像上の動物だそうだ
表情豊かな焼き物
護摩を焚いて神々に煙を捧げるらしい
かつて栄えたカミナル・フユ遺跡の様子
カミナル・フユ遺跡で観光客の姿を見ることは稀ですが、まるで新宿御苑のような広い森を持つ公園として整備されており、現在では近隣住民の祈りの場として使われているようです。週末にもなると、マヤを祖先に持つのであろう人々が集い、樹の根元に花を捧げ、泣きながら祝詞を唱え、護摩を焚いてポップコーンやロウソク・葉巻などを天に捧げます。カトリックが広く布教されたグアテマラにおいて、カミナル・フユ遺跡は、マヤ先住民の“現代の信仰”を垣間見ることが出来る貴重なスポットと言えるでしょう。