霊鷲山のサル

ナマステ。中村です。
引き続きインド添乗のこぼれ話を一席。(前の記事はこちら

霊鷲山の頂上へ続く道と外輪山霊鷲山の頂上へ続く道と外輪山

ブッダゆかりの地ラージギル。漢字では「王舎城」と訳される。
ブッダの布教活動の拠点であったかつてのマガタ国の首都ラージャグリハのあったところだ。ラージギルの郊外にある霊鷲山(りょうじゅせん)と呼ばれる山の頂上でブッダはたびたび説法をしたと言われ、ブッダの八大聖地のひとつに数えられている。当然ながら各国の仏教徒が聖地巡礼にやってきている。

ということで、チベットやブータン、ミャンマーなどから来ている巡礼者たち(プラス物売り)と一緒に頂上を目指す。道中には大迦葉(マハーカッサパ)の瞑想した洞窟などがあちこちに点在し、見晴らしのいい場所からは遠くに外輪山が見える。
「なるほどこの地は周囲を山に囲まれた天然の要塞で、マガタ国は豊かな国だったに違いない」などと往時に想いを馳せる。

「危ない!」

突然、道の脇から大きなサルが出現し、前を歩くチベット人の尼さんの手からビスケットをひったくって行った。ハヌマンラングールという種類のサルだ。ネパールやブータンでも見かけるのでお馴染みだか、ここのはなんだかデカくて凶暴そうだ!

「危ないから食べ物を見せちゃダメだよ、怪我するよ」

と、その尼さんのそばに駆け寄る。ところが、彼女は何も聞こえないかのように、カバンからドンドンお菓子を取り出しては、封を切る。遠巻きにしていたサルが、またサッと寄って来てお菓子をひったくる。

「うわっ、危ねえ!」

飛びのく私を尻目に、彼女はお菓子を出すことを止めない。次から次へとサルが増えていき、彼女の差し出すお菓子をひったくる・・・。

実は彼女は仏教で言うところの「喜捨」をして、功徳を積んでいたのだ。
とはいえ、日本でも日光などで餌付けされたサルが悪さをして、大変なことになっていることを知っている身としてはほっとけない。

「餌をあげると人を襲うようになるからダメだよ」「ケガするよ」
「野生の動物だから餌をやらなくても生きていけるから」

などと説得を試みるが、英語が通じないのか、そもそも意味が分からないのか、まったく聞く耳なし。「信仰」と「常識」のせめぎあいである。

結局彼女はカバンの中にあったお菓子を全てサルに施すと、満足そうに歩いていった…。
ダライ・ラマ法王やお釈迦様なら、いったいなんと言って説得するのだろうか?

ハヌマンテラングール霊鷲山のハヌマンラングールの母子

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