梅雨の晴れ間に恵まれた2日間でした
最上地域観光協議会の協力により、女性エベレスト初登頂者の田部井淳子さんにもご参加いただいた「~田部井淳子さんと探す~ ブナと巨木のもがみ回廊の魅力」ツアーの様子をご報告します。
“ミニ新幹線”とも呼ばれている山形新幹線は、福島より先は在来線の線路を走ることになり、東京駅から新庄駅までの所要時間は4時間弱。飛行機を使えば沖縄や北海道までも行くことが可能な時間ですが、車窓から青々と育っている稲や旬のサクランボ(さくらんぼ東根という駅もありました)、ローカルな無人駅や通勤・通学の乗客などを眺めていると、飛行機などでは感じられない旅情を味わうことができます。
1日目 新庄駅~米湿原~小杉の大杉~大美輪の大杉~シェーネスハイム金山
ツアーにご参加いただいたお客様や、最上地域観光協議会の担当者、今回のツアーのメインガイドである白倉さん達と合流した後、まずは鮭川村の「米(よね)湿原」を目指しました。以前は葦が茂る荒れ地だったそうですが、今回、湿原の案内をしていただいた矢口末吉さんを始めとする、地域の方々の活動により、希少な動植物が多数見られるほどまで環境を復元することに成功したそうです。「昔は家畜を洗っていたんだよ」と教えていただいた溜池では、ルリイトトンボやアカハライモリ、モリアオガエルの卵などを観察することができました。生息するゲンゴロウを守るため、わざわざバックアップ用の溜池まで作っているそうです。
溜池でモリアオガエルの卵を見つけました
湿原には貴重なトキソウが咲いていました
1時間程度のハイキング後は、米集落の公民館にてワラビやタケノコ、ミズなどの山菜や、笹巻き(笹で巻いたもち米のチマキに、きな粉と砂糖を付けていただきます)、冷たい麦茶などを振る舞っていただきました。米集落は9世帯が生活する小さな集落ですが、昔から美味しいお米が採れることで有名だそうで、矢口さんが「米米クラブ(よねよね、です)」と呼んでいる、田植えや収穫の体験会なども催しているそうです。
次の目的地があるので、ビールはNGでした…
矢口さん曰く「米集落は大体ここにいる人で全員集合です!」
その後は、「小杉の大杉」や「大美輪の大杉」といった巨樹・巨木を観察しつつ、シェーネスハイム金山という温泉が併設された宿泊施設へ向かったのでした。夜に開催した田部井淳子さんのお話「楽しい山歩き」も盛況のうちに幕を閉じました。
小杉の大杉・別名トトロの木
地域の方もお招きした田部井さんの講座
2日目 シェーネスハイム金山~女甑山の大カツラ~男甑山~名勝沼~まむろ川温泉~新庄駅
元々は修験の山だった真室川町の甑山(こしきやま)を目指しました。登山口から明るいブナ林を歩くこと30分で、女甑山の麓に聳える大カツラに到着。“マタギが狩りの前に祈りを捧げたご神木”という話も頷ける素晴らしい枝ぶりの巨木でした。黄葉する秋もきっと素晴らしい事でしょうね。
双耳峰の甑山は男甑と女甑と名前が付けられており、それぞれに名前の由来となったシンボルが存在します。細い稜線を辿って男甑山の山頂へ立つと、まさに“これ”といった感じの「烏帽子岩」が眼前にそそり立っていました。ちなみに、女甑山の名の由来である「赤穴」は、現在は樹木に覆われはっきりと見えなくなってしまっているようですが、過去には断崖絶壁の上から“それ”を覗く荒行が行われていたとのことです。なんとも恐ろしいですが、想像するとちょっと微笑ましくも感じます…。
登山ルートにある「名勝沼」では、語り部でもある案内人の新国さんが、この沼にまつわる民話を披露してくれました。そのお話を要約すると、
いつも悪さをするので村人は大変困っていました。
偉い行者様でも退治に失敗してしまうほどだったのですが、
あるとき山の女神が水浴びをしようと沼に入ったところ、
それを見た大蛇はびっくり。「俺はとっても女の裸なんか見れねぇ」と、
尻尾を巻いて“秋田側”に逃げ出しましたとさ。
臨場感たっぷりの語り部をする新国さん
ブナの美林、神々しい巨木の数々、そして豊かな歴史と文化―。そんな山形県最上地方の魅力を、2日間に渡って満喫したツアーでした。時期によって訪れる場所は変わりますが、このシリーズは今後10月と3月に設定をしています。添乗員や案内人、役場の方や田部井さんなど、総勢10名以上のスタッフが入れ替わりで同行するという、なかなか貴重でゴージャスな企画です。それぞれ15名限定の少人数ツアーですので、早めの問い合せをお勧めします!