ツアー名:冬の韓国南部 クロハゲワシを観察 4日間
2018年1月7日(日)~1月10日(水)
写真・文●ツアーガイド:戸塚 学(とづか がく)
冬の韓国南部 1日目
関西空港に集合して出発。かなり飛行機は揺れたものの、無事釜山空港へ。仁川空港と違い丁度良い広さで荷物の受け取りもスムーズに外に出ると、現地ガイドの朴さんが私たちを迎えてくれました。
そのまま初日の目的地「ナットンガン」に向かい、早速鳥たちを探します。韓国はお隣の国、ましてや釜山周辺は九州に近いこともあるからか、日本で見られる顔ぶれが多いです。スズメ、ツグミ、ジョウビタキを見ていると、「カシャカシャ」と鳴き声が? そう、韓国と言えば象徴的なこの鳥、カササギです。愛想よく近くでモデルを務めてくれました。
川面にはカルガモ、ヒドリガモ、オオバン、カイツブリ、オナガガモが浮かび、上空にはカワウ、ウミネコ、セグロカモメが飛んで行きます。遠くの中州にはオオハクチョウが群れで翼を休む姿を見られました。
冬の韓国南部 2日目
天気予報通り残念な雨。この時期、不用意に濡れると体調を崩す危険性があります。夜明けも7時過ぎなので、慌てず遅めの9時に出発。まずはクロハゲワシのポイントに向かいますが1羽もいません。
かわりに何故かどこに行ってもキジバトが多く、まさにキジバトワールド! そんな中、やっと現れた1羽のクロハゲワシが雨の空を悠々と飛ぶ姿をみんなで眺めて興奮しました。
10時にクロハゲワシの保護活動をされているキム先生と合流。訪れた「コソン」は恐竜の化石が出ることで有名らしく、どうせ雨なのだからと恐竜のテーマパークへ。本来は休館中だという事でしたが、先生の「顔」で中に入れることに。子供向けと思ったら大間違いで、かなりリアルな作りです。参加者の1人は恐竜好きということで、とても感動していました。その後は先生と食事をしながら、クロハゲワシについていろいろとインタビューさせていただきました。
食後は東屋で雨宿りをしながら、食堂目の前の探鳥ポイント「チュナム」に広がる池を眺め、オオハクチョウやカモ類を堪能します。カササギたちが騒ぐ方向を見ると、群れから200mほど離れた木の枝上部に猛禽っぽい塊が? 双眼鏡で覗くとオオタカの幼鳥でした。反対側へ移動すると田の中にマナヅル、マガン、ヒシクイ(オオヒシクイ)、オオハクチョウが群れで採餌をしています。また、池の方にはガン類、カモ類、オオハクチョウの姿が見えました。
道路わきの草むらにスズメの群れがいたので見ていると、その奥に細かなものが動きました。双眼鏡で見るとダルマエナガの群れです。100羽近くいます! ゆっくり近づくと、かなり迫って観察・撮影ができました。雨に濡れながらも、みなさん大満足です。実はこの時、シジュウカラも近くに来たのですが、注目はダルマエナガが持って行ってしまいました。シジュウカラには申し訳なかったかな?(笑)
雨が止まないのでハイドに入り、水の張られた田んぼでカモ類を見ていると、マガンが飛んできました! 次いでハクセキレイの中に1羽だけ顔の白いものがいたのでよく見てみると、ホオジロハクセキレイでした。その他、タゲリ、マガモ、オナガガモ、ジョウビタキ、オオハクチョウ、オオバンも見られました。また、突然鳥たちが飛びあがるのでよく見ると、ハイタカが通過していきました。これはラッキー!
それにしても寒い! 氷点下になっていないものの、気温は3度…。じっとしているので着込んでも寒いです。後ろに水辺が観察できるタワーがあったので入ってみると、こちらは暖房が入っていて温かく「ほっと」しました。大きな備え付けの双眼鏡があるので覗いてみると、とてもきれいに見えます! 日本でこんなに見える備え付けの物はあったかな? と思ってしまいました。おかげでヘラサギ2羽を見つけることができ、本日も無事終了。明日は晴れるというので期待しましょう。
冬の韓国南部 3日目
晴れたので8時30分に出発! おのずとみなさんの期待が高まる車内は心なしかハイテンションです。しかし、クロハゲワシのポイントに行くと1羽もいません。昨日、キム先生から伺った通り「早く行っても何もいない」ということを実感しました。
10時にキム先生に指定された合流場所へ向かうと、ある建物の中に招き入れられました。公民館のような場所ですが、中にはクロハゲワシに関する展示物や自然関係のパンフレットが並べられていました。ここでは自然観察のレクチャーができるようになっているとの事です。
クロハゲワシのエサの時間まで少しあるので近くの池に行くと、カンムリカイツブリとカワアイサの群れを見ることができました。しかし期待していたコウライアイサは見られませんでした。残念!
エサ場に移動すると、キム先生が大きな袋の口をほどいて地面にエサを出していました。すでに上空には群れが広がっており、200mほど離れた場所に降りているクロハゲワシも見られます。
先生がこちらに向かって移動してくると、エサは一瞬で彼らの身体に覆い隠されてしまい、続いて降りようとする巨大な翼が、まるで音もなく空を舞う「畳」のように見えます。クロハゲワシの鳴き声に交じりカササギ、ハシブトガラスの声があたりを包み込みます。
もしこの光景を何かにたとえるならば「出水のツルの朝の採餌時間」もしくは「羅臼の海ワシクルーズ」といった所でしょうか? とにかくクロハゲワシの大群が目の前でひしめいています…。約2時間堪能したのち、私と参加者のご夫婦が韓国の教育TVのインタビューを受けるというおまけ付きでした。
昼食後はキム先生と先生の友人のバーダーの案内で海岸部へ車で移動しつつ、夕方まで鳥を探します。お目当てのズグロカモメは潮が悪くてお目にかかれませんでしたが、ダルマエナガ、ダイゼン、ハマシギ、ヨシガモ、アオアシシギ、クサシギなどを見ることができた事と、近くでツクシガモの泳ぐ姿と群れで飛ぶ姿を見られた&撮れたのは良かったです!
冬の韓国南部 4日目
朝ご飯を食べていた時は晴れていたのに、出発時間になると外には雪が積もっています。これは雪景色の中でツルやガンを楽しめる! と期待が広がりますが、進むにつれて雪が多くなり、道路にはスリップする車も!!
高速道路は塩カルが撒いてあるのか路面が出ているものの、ところどころ雪が多くなると渋滞する箇所も出てきました。何とか高速道路を降りると…今度は一般道が動かない。前方でスリップした車が何台もいてどうにもなりません。約30分で移動できた距離は100mほどだったでしょうか。ここで無理して「チュナム」へ行っても空港に戻れない可能性があるし、スリップ事故に巻き込まれる危険性もあるので、とんぼ返りで空港へ向かうことにしました。しかし、Uターンできそうな所まですら車が動きません。
渋滞中にふと気がつくと、車の横の木の枝にダルマエナガが止まっていました。みなさんに伝えていると、続いて小さな鳥が2羽同じ場所に飛んできました。双眼鏡で見るとメジロ? もしかしたらチョウセンメジロかも? と車内は大興奮に包まれます! 写真を撮って確認すると…どうやらチョウセンメジロではなく普通のメジロでした。ちょっぴりがっかりしたものの、他にジョウビタキとスズメも確認できました。
思わぬ探鳥を楽しんだ後、約10分でラッキーにもUターンができたので高速道路に乗って空港に向かいます。釜山には雪もなく、穏やかな太陽の光が降り注いでいました。昼食とお土産を買って無事空港に到着。予想以上に早く着いてしまいましたが、安全第一です。無事に帰ることができなければ意味がありません。フライトまでの待ち時間は長かったものの、時間通り飛行機が飛び関西空港に到着。それぞれ帰路に着きました。