2017年5月27日(土)~28日(日)
文●ツアーガイド:峯尾 雄太(みねお ゆうた)
週末だけでコンパクトにバードウォッチングを満喫するため、初の試みとして夜行バスでの上高地探鳥ツアーを実施しました。
到着は早朝5時過ぎ。車内アナウンスで起きると、車窓から朝焼けの焼岳が「どどーん」と迎えてくれました。快晴、無風で波のない大正池に映った山々の展望は素晴らしいものでした。まさにバードウォッチング日和。
上高地バスターミナルで朝食・トイレ・防寒対策を万全にした後、いよいよ探鳥スタートです。さすが標高が高いだけありますね。朝は冷えて気温一桁、木道は霜で一部白くなっていました。それでも林からはコマドリの声が響き、早速「期待大!」と思わせてくれます。
水辺で出会えたオシドリ夫婦の愛想の良いこと。5メートル位まで近づいてきてゆっくり泳ぎ去っていく姿を堪能しました。
超有名な河童橋を通過し、澄んだ雪解け水が流れる川と湿地が続く森の道を進みます。すると、ミソサザイが全身全力でさえずっていました。個体数はかなり多いようです。オオルリも良く鳴いていて、いつもより多く聞こえるように感じました。
アオジは地上採餌でビンズイは水浴び。キバシリが巣立ち雛に餌運び。イワツバメは乱舞。コサメビタキは3羽でさえずりまくり、樹冠部の見事にカモフラージュされた巣にクモの巣を運搬しています。
樹上ではウグイスが喉を震わせています。キビタキも♂♀がよく姿を見せ、さわやかボイスが心地よいです。物まねレパートリーの多い個体にも出会えましたが、コルリやオオルリ、コマドリ、コゲラ、カケスなどが上手なかなりのテクニシャンでした。
フライングキャッチしていたサメビタキは、コサメビタキとの識別点を確認。センダイムシクイやエゾムシクイ、メボソムシクイの3種も姿を見せてくれました。アカゲラ、オオアカゲラや、上空をハヤブサが飛び岩場の木にとまる姿も確認できました。
エナガは繁殖中の兆候“尾曲さん”の姿がよく見られ、パッと見ただけでは膨らんだ幹にしかみえない巣に餌運びをしていました。
残念だったのが何度も声が聞こえたクロジとコマドリ。観光客が増えてくる昼過ぎまでチャレンジしてみましたが、タイミングの悪さもあって結局見ることはできませんでした。
お昼になっても明神岳はくっきり見えていましたが、日向はすっかり汗ばむ陽気です。やはり野鳥観察は朝8時までが勝負ですね。鳥より花を愛でる時間がどうしても増え、花を見つけては名前を確認しながら散策を続けました。
私は植物の名前はからっきしなのですが、シロバナエンレイソウやサンカヨウ、ツバメオモト、ミヤマカタバミ、ニリンソウ、エンレイソウ、あいにく蕾だったマイヅルソウなどの花達に会えました。オオカメノキの花もそうでしたが、この時期は白い花が美しかったです。
結局この日は早朝から15時まで9.4kmを歩きましたが、途中何度もベンチで休み、鳥がいたら止まり、花を愛でながら森の空気を吸い、川の音を聞きつつのんびり散策するのは、時間に余裕がある「夜行日帰り」ツアーならではの楽しみ方だったと思います。〆のソフトクリームやビールもぴったりの運動量でしたね。
夜行バスツアーは初めてだったのですが、お陰様でグッスリ快眠でき、朝から夕方近くまで探鳥を楽しむことができました。ただ、耳栓とヘッドレストがあればなお良かったかなと感じます。また来年も同様の企画で楽しみたいと思っていますので、皆様のご参加をお待ちしています。
【今回確認できた鳥達】
オシドリ・マガモ・キジバト・コゲラ・オオアカゲラ・アカゲラ・ハヤブサ・カケス・ハシブトガラス・キクイタダキ・コガラ・ヒガラ・シジュウカラ・イワツバメ・ウグイス・エナガ・メボソムシムイ・エゾムシクイ・センダイムシクイ・メジロ・ゴジュウカラ・キバシリ・ミソサザイ・カワガラス・アカハラ・コマドリ・サメビタキ・コサメビタキ・キビタキ・オオルリ・キセキレイ・ビンズイ・ウソアオジ・クロジ