コース名:ラサでミニ巡礼と年越し6日間
2015年12月29日~2016年1月3日 文●中村 昌文
汗ばむほど「暑い」ラサの冬
普通、「冬のチベット」というと「極寒」「雪の中」をイメージされると思いますが、実はそうでもありません。このことは風の旅行社のウェブでも、パンフレットでも繰り返し強調されているので、ここに詳しくは書きませんが、今回は、途中で最高気温が20度にもなり、日差しは強烈で、日中に旧市街を歩いている間は厚手のダウンジャケットを着ていたら汗をかくほどで、薄手のフリースジャケットを羽織っただけで表を歩けるような時間もありました。でも陽が陰るとあっという間に冷え込んで「やっぱりダウンが必要だ」となるのです。
そして、もちろん、朝夕はグッと冷え込みます。しかし、元旦にご来光と、初日の出に染まるポタラ宮を、ホテルの屋上から眺めていたときも、当然寒いのですが、「外に出ていられない」という程ではありませんでした。 恐らく気温は0度前後。乾燥し澄んだ空に輝くポタラ宮は本当に美しく、しばし寒さを忘れるほどでした。今回は寒さよりも、乾燥と暑さを感じる冬のラサでした。
冬は巡礼者が熱い!
次に「熱かった」のが、予想以上だった巡礼者!
チベットも中国も、西暦の1月1日は単に「年の変わり目」というだけで、「お正月」と言えば、チベット暦の「ロサール」と中国の旧正月=春節のことを差します。2016年はどちらも西暦の2月9日が新年です。西暦の大晦日にチベットに行ってもお正月ムードはほとんどありません。
ところが、チベットの田舎でもお金を持っている人が増えてきたのか、年末年始にまとまったお休みを取れるようになったのか、この時期にラサを訪れるチベット人巡礼者の数が例年よりずっと多いのです。もちろん農閑期の巡礼シーズンではあるのですが、明らかに以前と様子が違います。以前は「最後にいつお風呂に入ったの?」と聞きたくなる、バターの匂いに包まれていた巡礼者が多かったものですが、今では卸し立ての綺麗な民族衣装に身を包んだ、晴れがましい巡礼者がたくさんいるのです。
夏の間は多すぎる観光客に対応するため、入場時間制限をするポタラ宮。「冬は制限もなくて、ゆっくりのんびり観光できます。」という触れ込みだったのですが、そんな訳で、今年の冬のポタラ宮の中は山手線の通勤ラッシュのような混み方でした。しかし、観光客ではなく巡礼者に囲まれているので、ギュウギュウ詰めですが、「チベットの聖地にいる」という雰囲気が味わえて、これはこれで悪くなかったのではないでしょうか。
チベットで最も尊い、「12歳の時のお釈迦様」の像が置かれているジョカン寺でも、当初の予定は「巡礼者の多い午前中に見学」するはずでしたが、あまりの巡礼者の多さに恐れをなして、急遽午後に予定を変更。それでも観光客に混じって大勢の巡礼者がお参りに来ていました。特にご本尊の前では前にも後ろにも動けない! というくらいの人ごみで午前中だったらどうなっていたことやら・・・。ここでもチベットの巡礼者パワーをまざまざと見せつけられました。
大人も子供もお年寄りも 祈る!祈る!祈る!
今回のツアーのテーマはタイトルにもあるように「巡礼」。この季節のラサには、もちろん遠方からの巡礼者も大勢いるのですが、チベットでは暮らしの中に「祈り」が息づいていて、ラサに住む地元の方も大勢巡礼(お参り)に来ています。ジョカン寺やポタラ宮の周囲をめぐる巡礼路には、そんな巡礼者を目当てにした沢山の露店も並び、まるで浅草の仲見世かアメ横のような賑わいです。
ちなみに、巡礼路の途中にはたいてい休憩できるお茶屋さんがあり、チベット名物の甘いお茶「チャンガーモ(チャガモ)」が疲れた身体を癒してくれます。(チャンガーモの話は前に記事に書いたのでそちらをご覧下さい。)
巡礼路を歩いていて、印象的だったのは、孫と一緒に歩いているお年寄りが多いことです。小さな子供だけでなく、日本で言えば「反抗期真っ最中!」という感じの10台後半の若者がお爺さんやお婆さんたちの手を取り、肩を貸し、寄り添いながら歩いているのです。お客様とも「ほほえましいね」と話していました。こういう光景を見ると仏教の教えが人々の心に根付いているのだなあと、実感します。最近の日本では照れてしまって、ちょっとお目にかかれない「暖かさ」。チベットの人々の心に触れた気がした瞬間でした。
やっぱりガイドはチベット人
風の旅行社のチベット・ツアーでは、「ガイドはチベット人」ということがセールスポイントの一つです。当たり前のように見えますが、これは決して世にある「チベット・ツアー」のスタンダードではありません。何故なら日本語の出来るチベット人ガイドは数えるほどしかいないからです。しかし、ツアー参加者はガイドを通じてその国を知るのですから、そこはコダワリたいポイントです。
今回我々のグループを案内してくれたガイドのG君は、チベットとネパールの国境付近の小さな村の出身で、お寺に入れば解説の合間に小さな声でお経を唱えるような信心深い男。流暢な日本語で、子供のときの話、日本とはまったく違う家族形態の話、大学で日本語を学んだ話、ラサでの暮らしなど、ドがつくほどの田舎の村で初めて大学に進んだという、彼でなければ語れない「あるチベット人の一生」の一端を語ってくれました。
お客様の一人が「実は前にチベットに来たことがあるのですが、そのときとガイドが全然違う。やっぱり風の旅行社できてよかった。」とおっしゃってくれました。
そしてお客さまも、熱かった!
今回の参加者は定員いっぱいの16名だったのですが、そのうちなんと12名が1名参加! 一人じゃ気が引けるという方、全然問題ありませんよ!
そして、年末年始にチベットへ繰り出そうというだけあって、好奇心旺盛で旅慣れた方が多く、観光の合間には、歩いてバルコルへ繰り出し、いいお土産物屋さんの情報を交換したり、それぞれの旅の情報を教えあったりと、ツアーは終始和気藹々の雰囲気でした。
チベットの年越しの儀式を行った民家でも、全員が民族衣装に着替えて記念写真を撮影。旅を楽しもう、という前向きな気持ちが、グループ全体を包んでいたような気がします。添乗員冥利に尽きる熱いお客様たちでした!
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