ネパールのフリートレッキング

*風のメルマガ「つむじかぜ」693号より転載


9月20日からネパールの大祭インドラ・ジャトラを観るツアーに同行し、その様子を先週この稿に書かせていただいた。添乗をしつつNKT(NEPAL KAZE TRAVEL CO.,Ltd.)の社長プリスビーやスタッフと話をするのも大きな目的だ。もちろん添乗が主だから多くの時間は取れないが、今回はプリスビーに、カトマンズの郊外にあるヒマラヤ展望リゾート・ナガルコットへの1泊サイドトリップに付き合ってもらった。

ネパールを訪れるといつも驚く話が幾つか出てくるが、今回は、フリートレッキングが禁止されるかもしれないという話を聞いた。フリートレッキングとは、ガイドなしで旅行者が自分たちだけでトレッキングすることを指すが、現在は、トレッキング許可証のTIMS(Trekkers Information Management System)を、ネパール観光局(Nepal Tourism Board)に行って自分で取得することができる。このTIMSをガイド付きのトレッキングでないと許可しない方向で検討が進んでいるというのである。

その理由は、フリートレッカーの高山病やケガなどで大きなトラブルが頻発するようになってきたことにある。例えば、救援ヘリを呼んでも保険に入っておらず支払いで大もめする。かと思えば、逆に保険に入っていることをいいことに、疲れたからというだけで簡単にヘリを呼ぶので、保険会社が支払要件を満たしていないと支払いを拒否してこれまた大もめになるといのだ。

以前からそういうことはあったはずだが、最近はとにかく悪質になっていて対処に苦慮しているというのだ。既に保険会社からは、トレッキングを引き受け対象から外そうかという話まで出ているという。

最近、日本でも無謀な富士登山が問題になっている。富士山はれっきとした高所であり、天候は変わりやすく夏でも防寒具は欠かせない。しかし、防寒具も持たず軽装でやってきて徹夜で登る。これでは事故が起きないほうが不思議である。

どんなことも大衆化することが悪いというわけではないが、必ず、質の低下を伴う。ことは命に関わることである。まあいいやでは済まされない。トレッキングにはルールもあればマナーもある。それが保たれてこそヒマラヤトレッキングの持続性が確保される。間違っても保険の対象からトレッキングが外されるなどという事態にならぬよう最善の策を講じてほしいものである。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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