茶店

*風のメルマガ「つむじかぜ」688号より転載

この原稿を書くために喫茶店に入った。時間は午後の4時半。平日のこんな時間に喫茶店に入ることはあまりないので、どんな人たちがいるのだろうかと、つい周りを見渡し観察してしまった。

目の前の学生風の女の子は、大きなシフォンケーキに生クリームを一杯かけてフォークとナイフで食べている。飲み物はカフェオレか? かなり大きなマグカップである。他人のことなど心配している場合ではないが、カロリーオーバー間違いなしだ。

全体で50席ほどある。ほぼ満席だが、なんといってもリタイア組が多い。特に男性。文庫本を読んでいるならいいが、ボーっと前方を見つめたままじっとして動かない人や、腕組みして眠っている人もいる。毎日、ここへ来るのが日課だろうか。座る場所も決めているに違いない。

グループが何組かいる。カルチャー教室の帰りだろうか。否、格好からしてフィットネスクラブやヨガ教室の帰りかもしれない。そういう集まりは、今や老人クラブと化しているらしいが、内館牧子の『終わった人』のような人間模様がこの人たちにもあるのだろうか。

分煙されていて、私がすわった席の正面のガラス窓を通して喫煙ルームが見通せる。向い合いで26席あるが、一組を除いてみな一人で座っている。男女比はざっと6:4。女性の喫煙者も多い。若い女性も何人かいるが、全員がイヤホンをつけてスマホをいじっている。

ここ数年、郊外に「○○珈琲」という店が目立つようになった。どう考えても、車でわざわざ行くしかない。結構値段も高いが味も良いという。団塊の世代の需要がこうしたサテンのできるきっかけになり、今も、団塊の世代で繁盛しているらしい。

サテンは、一人になるにはいい場所だ。休日には、家の近くのマックやモスで原稿を書いたり大学の授業の用意をしたりするが、家族連れや高校生が多く居づらくなる。あまりボーっとするには向かない。家の近くにも、静かなサテンができるといいのだが、今度、「○○珈琲」に行ってみよう。

大分、陽が傾いてきた。窓から見える15階ほどのマンションの上半分に夕陽が当たっている。冷房で体が冷えてきた。今日も暑かったから、外はこの時間になっても蒸し暑いに違いない。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


シェアする