モンゴルでの会話

*風のメルマガ「つむじかぜ」679号より転載

MIATモンゴル航空の社長が一ヶ月ほど前に交代となり、挨拶も兼ねてウランバートルへ行ってきた。

新社長は一昨年までドイツの在モンゴル大使館で経済担当の書記官だったという。航空会社は専門外だが、国営会社(現在は半官半民)の社長は、従来からこうした優秀な官僚が務めるのが常だ。年齢は50代前半。自転車競技の協会の会長もしている。モンゴル人にしては比較的スリムな体型だ。

会って5分後には「モンゴル航空に必要な施策は何か?」とストレートな質問が飛び出した。驚くことはない。これがモンゴル人のやり方だ。「日本では一年近く前からツアーを作って販売を始めるから、フライトスケジュールと料金を早く出してくれ。特にチャーター便の可否の回答が遅い」と答えた。

新社長は経営上の悩みも教えてくれた。「冬の客を増やせないか。冬になると海外からの人の往来が殆どなくなり飛行機は空港で寝ている。そんな現状では機材もこれ以上増やせない。代々、モンゴル航空の社長の苦悩は冬の対策にある」

長くて寒い冬がなかったらこの国はもっと発展したかもしれないと思う反面、冬の厳しさが強いモンゴル人を育てたともいえる。長くて寒い冬はモンゴル人のアイデンティティーの一つではないのか。

モンゴル航空の新社長がドイツにいたころ一緒に働いていた職員が、MONGOL KAZE TRAVELの社長ハグワの友人でもあったので、その友人も交えて食事をした。モンゴル人の話好きにはしばしば拘泥するが、彼の熱心さには圧倒された。

「日本の戦後の経済発展はドイツを見習ったと思うがそうか?」と聞かれ、「それは明治維新のころの話。戦後は、軍事的に米国の傘に入り経済的にも米国を真似てきた」と答えたが、彼はドイツ贔屓の姿勢を崩さず。「では何故、ドイツと日本は戦後急激な発展を遂げたのか」と畳み込んでくる。「両国民の勤勉さが大きな要因。教育なくして国の発展はない。モンゴルがこれだけ急激に発展したのも教育のお陰だろう」

話はどんどん深みにはまっていく。

「今までモンゴルは欧米を手本にしてきたが、最近は欧米の経済・社会が不安定だ。一方、中国は内部に色々問題を抱えており経済成長は長く続かないと思っていたが、現在でも順調に成長している。暮らしが良くなれば民衆の抵抗もなくなり、中国流が正しいということになる」と少々不安げに問いかけてきた。

今、モンゴルは、中国、中央アジアなどの経済協定に入るか否かで大論争になっているそうだ。習近平政権が推し進める一帯一路のことかもしれないが、最近中国へ留学する若者も増えていて、従来と違って中国寄りの主張も目立つようになっているそうだ。

モンゴルは大国にはさまれ、昔からこういう選択を迫られてきた。「スイスのように中立を保った方がベターでは」と提案したが、こういうまじめな官僚がいるモンゴルは、益々今後発展していくに違いない。日本にはない初々しい熱を感じる。羨ましい限りである。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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