*風のメルマガ「つむじかぜ」668号より転載
亜細亜大学で教えているゼミの学生に、新聞を読めといくら言っても効果がないので、何かいい手はないかと考えあぐねた末、正月休みに新聞の切り抜きをさせることにした。「読め」とは言わず、「一日3つの記事を選び切り抜いてA4のノートに貼りなさい。記事は何でもいい。切り抜いて貼るだけだ。」と説明した。
まるで小学生の宿題並みである。たった6人しかいない3年生のゼミだからこんな悠長なことができるが、本来、大学のゼミで時間をかけてやるようなことではない。もちろん、記事を選ぶときには新聞全体に目を通し多少は読むだろうというのが狙いだが、継続させるには、単純な作業にして結果が目に見えるようにすることがコツである。
年始の休み明けに持ってこさせて感想を聞いたら、「新聞って意外とおもしろいっす」という、それこそ意外な答えが返ってきた。これはもしかしたらいけるかも、と気を良くし、1月も継続させた。切り抜いた記事から一つを選んで内容を説明し、自分の意見を述べるという授業もやってみた。段々に短くて読みやすい記事ばかりが集まるようになってきたが、それでもまずは“良し”とするしかない。
中・高とスポーツしかやってこず、大学はバイトとスマホに時間を費やし、世の中にごまんとある会社がどんなことをしていて、そこで働いている人たちはどんな仕事をしているのか殆ど知らない。新聞はおろかテレビのニュースすら見ないで、せいぜいLINEニュースでエンタメ情報をチェックするくらいが関の山。そんな状態で自分の将来のイメージなどわくはずがない。これじゃああかんだろう、というのが新聞の切り抜きを始めた理由である。読みやすく短い記事しか集まらないとしても、全く読まないのとは大きく意味が違う。
実は、私も昨年末から切り抜きを始め、今ではA4のスクラップブックが4冊目に突入した。家の新聞は私一人のものではないので、週に一回ほど休みの日にまとめて切り抜く。その際、溜まった新聞に目を通しあれこれ考えるのは、なかなか充実した一時である。
時々、以前のノートを繰って切り抜いた記事を見直す。通常、新聞は読み流して終わりだが、読み返すことで実に良い勉強になる。こんな歳になっては忘れる方が速いから、どこまで役に立つかわからない。しかし、何事も自分のためである。継続し習慣にしていきたいと思う。
★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。