「てるみくらぶ」社長逮捕の報をうけて

*風のメルマガ「つむじかぜ」651号より転載

今年3月に経営破綻した旅行会社「てるみくらぶ」の山田千賀子社長と、元経理責任者が昨日逮捕された。銀行から融資名目で現金約2億円をだまし取ったという詐欺容疑だ。

確かに、銀行にしてみれば、嘘の決算書を見せられて融資させられたということになるのだろうが、そんなに簡単に嘘の決算書で何億円もの融資をしてしまうものだろうか。

一方、一般の被害者は3万6046件で、被害額は99億2352万円、1件あたりの平均額は27万5301円。破産手続きの開始決定が3月27日。あの記者会見も同日である。

ところが、3月23日までに入金すると旅行代金を割引するといって販売を行っていた。これは3月23日が国際航空運送協会(IATA)への航空券代金約4億円の支払い期限だったためだが、その場しのぎの資金集めをしていたとしか思えない。このIATAへの支払いは週に一回の締め払い。たった一週間生き延びるだけなのにさっぱり理解できない。

まさに、お客様方こそ詐欺にあったといえるだろう。ただ、一人ひとりの被害額は少額な上に、訴えるとなれば訴訟費用も時間もかかるから、訴訟まで踏み切る方が出ず、このままでは、山田千賀子社長は泣いて謝ってそれで終わりかと、私は憤懣やるかたない思いでいた。

実は、私は、(一社)日本旅行業協会で法制担当をしている関係で、この件で何回も会議を行い、結果、保証金の一部値上げという結論になりそうで悔しい思いをしてきた。本来なら、保証金制度そのものと、犯罪をどう防ぐかは別問題である。

企業は業績が及ばなければ倒産ということがないとは言えない。中小の経営者は誰だってそうならないように日々闘っている。なのに、この山田千賀子社長は、2011年9月に6千万円、2013年9月に2億円、2014年9月に5000万円の配当を実施している。株は山田千賀子社長が25%、A氏が75%を保有していた。

ところが、先日、11/6に行われた債権者集会において、管財人の調査では2013年4月には月次の粗利益がマイナスとなり、その後も繁忙期を除いて毎月の粗利益はマイナスを継続。2014年9月期には債務超過に陥ったと報告されたのである。

債務超過に転落していたのに、配当金を自分に出して、その後も嘘の決算書で銀行から金を借り、お客様から集められるだけ集めて年収にして3300万円もの給料を取っていた。金融機関への詐欺容疑だけでなく、本当に返す金がないのか金の流れを徹底的に調べてもらいたい。そうでないと誰も納得しない。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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