*風のメルマガ「つむじかぜ」648号より転載
2010年、カリフォルニア州は排出権ビジネスを導入。この排出権取引は、1997年に採択された京都議定書で規定したもので「京都メカニズム」とも称され、温室効果ガスの削減を補完するものだといわれている。
2003年に米国カリフォルニア州シリコンバレーで創業した「テスラモーターズ」(今年、テスラに社名変更)は、電気自動車(EV)の専門メーカーである。カリフォルニア州がそんな方針を取ると知っていたかどうかは分からないが、テスラは現在、同州が推進する「ZEV規制」によって年間約120億円の排出権販売収入を得ているというから驚きだ。
ZEVとは、Zero Emission Vehicle:排ガスを出さないクルマのことである。2012年時点では、カリフォルニア州で年間6万台以上販売するメーカー6社(GM、フォード、クライスラー、ホンダ、ニッサン、トヨタ)がZEV規制(一定の割合でZEVを販売しなくてはならない)の対象であった。ところが2018年型以降、販売台数が中規模のメーカー(BMW、メルセデス・ベンツ、現代・起亜、マツダ、フォルクスワーゲン、スバル、ランドローバー、ボルボなど)にもZEV規制が適用されることになった。 ※自動車情報サイト「オートプルーブ」より
テスラは100%ZEVだから、排出権を他のメーカーに売っているというわけである。実は、テスラの次はトヨタがこの恩恵に預かっていた。何故ならZEVと言いながらもHV(ハイブリット車)やPHV(プラグインハイブリット車)も、ZEVとしてカウントしていいことになっていたからだ。しかし、その方式も来年は変更され、EVとPCV(燃料電池車)しかカウントされなくなり、トヨタは排出権を買う側に回るようになるという。まさにテスラの一人勝ちである。
このZEV規制を中国が取り入れようとしている。環境云々は建前で、実は、国家レベルの排出権取引を優位に進めたいという意図と、欧米日に席巻されてきた自動車産業を、中国主導にもっていくという大きな野望があると言われている。
しかし、大きな問題がある。その国の発電システムの構造によっては、EVが増えることでかえってCO2の排出量が増えてしまうという逆転現象が起こり得るのだ。まさに現在の中国がそれにあたる。火力発電を太陽光や風力などの自然エネルギーに転換する必要があり、中国もその方向で動いているが、同時に原発の割合を15%まで高めないと目標達成はできないそうだ。
原発の割合が70%を超えるフランスが、ZEV規制の効果を最も発揮するというから皮肉である。原発がいいとは到底思えない。何が本当のエコなのかさっぱりわからないが、当面はEVを巡る自動車業界、否、電機業界も含めた市場争奪戦が激しくなりそうである。
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