*風のメルマガ「つむじかぜ」634号より転載
私が子どものころは、質素=貧乏、贅沢=裕福という単純なイメージがあった。今では健康食ともてはやされる煮物が中心の田舎料理も、貧しさの象徴のように私には映っていた。都会から来た親戚は、ふきの煮物がおいしいと、おふくろの料理をほめそやしていたが、何だかバカにされているような気がして腹立たしかった。田舎の少年は、とんかつやビフテキを食べたいと単純に憧れていた。
ところが、高度経済成長を経験し次第に豊かになって来ると、癌や糖尿病などの成人病が増え、その原因は肉食が増えたせいだと言われだした。やり玉に上がったのは、コレステロール。特に悪玉コレステロールは、まるで病原菌みたいに扱われた。
経団連会長だった土光敏夫氏は、夕食がメザシとみそ汁と玄米という質素な食事で有名となり、「メザシの土光」と言われた。お蔭で、ステーキなど贅沢な食事は健康に良くない、というイメージが定着したように思う。質素に青魚を食べるくらいが日本人にはいいと私も以来、思って来た。
狂牛病が流行した折には、動物タンパク質を取ること自体が自然の摂理に反しているくらいにまで言われた。そもそも明治になって西洋化が進むまで日本人は、魚や鶏を蛋白源とし動物は食べなかったのだから、日本人には肉食は向かないなどとも言われた。
ここまで来ると単なるイメージや好みが先行し、果たして科学的な根拠があったかも疑わしいが結構、この30年ほどは、こうした論理がまかり通って来たように思う。
ところが、最近、年をとってもコレステロールの多い少し太った人の方が長生きをするということが次第に分かって来たというのだ。コレステロールも健康な身体を保つには必要。悪玉コレステロールだって役に立っているとまで言われるようになった。だから、年寄りも肉食の方が良いというのだ。
肥満は万病の元。肉食は止めて痩せなきゃ成人病まっしぐらと散々プレッシャーを掛けられてきたのに、肉も食べていいのかと思いきや、食べ過ぎはいけない。良質なたんぱく質を適度に取るようにしよう、という注釈がつく。
肉が良いか魚が良いか、私にはよく分からないが、余り気にせず食べればいい。但し、野菜は一杯。肉、魚は少な目にすることだ。そして、酒もほどほどに。これが一番難しいように思うが、暴飲暴食禁止! 腹八分目。これが私なりに到達した結論である。なんだ大したことじゃない。初めから分かり切っていたようなことだ。あとは実践あるのみである。
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