スポーツとは

*風のメルマガ「つむじかぜ」629号より転載

卓球に注目が集まっている。13歳の張本智和、16歳の平野美宇などの10代の天才アスリートが、リオオリンピックの後、一挙に頭角を現してきたからだ。新・天才卓球少女と言われている木原美悠(12歳)も控えている。

世代交代かというとそうではない。リオオリンピック代表の伊藤美誠だってまだ16歳である。石川佳純も24歳。層が厚くなって新たな競争が始まったという感じである。

張本、平野、木原の三選手は、「JOCエリートアカデミー」に所属している。この「JOCエリートアカデミー」とは、日本オリンピック委員会(JOC)が設置した組織で、平たく言えば、オリンピックでメダルを取れる選手をジュニアのうちから育てようというのがこの組織の目的。要するに英才教育機関だ。

2008年4月に創設され、2016年度時点で、中学1年から高校3年までの38名が所属。内訳は、レスリング8名、卓球12名、フェンシング9名、飛込み5名、ライフル射撃4名である。卓球は特に力が入っているようだ。

アカデミーは全寮制で中学1年から高校3年までの6年間、練習漬けの毎日を過ごす。中学校は北区立中学校へ、高校は北区の高校へ進学するが、もちろん部活などは行わない。部活をやっていても国際競争に勝てる選手は育たない。発足から9年。確実にオリンピックでメダルが取れる選手が育ってきたということなのだ。

こんなことをいうと時代遅れだといわれそうだが、スポーツには経験というものは不要になったのか? 中学生、高校生の方に英才教育を施せばベテラン選手の経験値など、簡単に凌駕してしまうとういうことなのか。あの水谷選手も13歳の張本選手に「完敗」してしまった。私も、あっけにとられて見ていたが、水谷選手は、これからどうするのだろうかと要らぬ心配をしてしまう。

スポーツとはいったい何だろう。10代で世界の頂点の経験をしたら、「モチベーションの維持が難しくなりました」といって早々に辞めていくのではなかろうか。どんな選手も怪我をしたり、スランプに悩むことだってあるだろう。10代でそんな状態になったら果たして立ち直れるのだろうか。

スポーツは人間の成長と共に技量も精神も磨かれていくのではないのか。技量だけの競争になってしまったら私は興味が薄れてしまう。葛藤で精神が揺さぶられ自分自身に勝つことが要求されるのがスポーツの奥深さだと思う。10代の選手にも精神の強さが伴っているから勝てるのだろうが、私には、急ぎすぎのような気がしてならない。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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