*風のメルマガ「つむじかぜ」598号より転載
亜細亜大学の学生たちがネパールから帰国し、2年生、3年生のゼミ生は、ネパールの基本情報、政治、宗教、教育、民族、カースト、そして観光政策などの観点で学習に入った。
何か本も読ませようと考え、『ネパールを知るための60章』(日本ネパール協会編、明石書店)を選んで勧めたが、2,000円定価なのにAmazonで3,300円の古本しか手に入らず、しかも、5冊しか表示されない上に一番高いものは13,800円もするので、とても学生には買わせられず、私が何項目か抜粋することにした。
しかし、この本とて2000年9月に発行されているから、情報としてはかなり古い。
『ネパール (暮らしがわかるアジア読本)』河出書房新社にしようかとも考えたが、これも1997年の発行である。
果たして、こういう本は、今後リニューアルされるのだろうか。もはや紙の本は売れないから、明石書店の『〇〇を知るための〇章』といった部類の本は、情報が古くなっても出版されないかもしれない。
一般に、南アジア、東南アジアの国々で、日本ほど書物が自国語で出版されている国は少ないのではなかろうか。もちろん、中国は書物大国だろうが、日本の出版物の多さはかなりなものである。
嘗てネパールのスタッフたちと話していて、彼らが本を殆ど読まないことに気付いた。新聞はよく読むが、本は、自国語で出版された本が極端に少なく、名著を読もうと思うと、英語版になるのでそう簡単には読めないというのだ。
日本人は、中国から文字を輸入し仮名を発明し、江戸に入って武士は藩校で学び、庶民は寺子屋教育で読み書きそろばんを修得した。明治に入ると早々に学制を創設し識字率は更に高まった。日本人ほど、書物が好きな国民も少ないに違いない。そういう下地があって出版物が世に流布し、雑誌から小説、専門書に至るまでありとあらゆる分野の本が溢れる出版大国になった。
しかし、今後は、出版物は減少の一途をたどるだろう。とにかく、今、日本人は本を読まない。新聞も読まない。デジタルの世界に急激に移行している。それは仕方のないことなのだろうが、出版とは、優秀な編集者がいて初めて良書が世に出てくる。果たして今後は、編集者という職が成り立つのだろうか。編集者の目を通らない著者の勝手な思い込みで書いた本は良書にはならない。
出版物の水準はその国の民度を的確に表すと私は思う。書物どころか、テレビも見ない若者が増えてきてテレビ業界すら危ない?かもしれない。私は、小学生のころからテレビで育ったまさにテレビ世代である。隔世の感これありである。
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