「エアバス380を6機発注!?そりゃ無謀だ!」スカイマークが、あの超大型飛行機のエアバス380を6機発注し、2014年からニューヨークを皮切りに国際線に参入すると発表したとき、そう直感した。そんな無茶が通るはずが無い。
そもそも、エアバス380という飛行機は、いくらアジアを中心に大旅行時代が到来し、2012年には世界の旅行人口が10億人を超えたからといって、約850人乗り(ファースト、ビジネスクラス設置で400~500座席)などという大きな飛行機が必要なのかと、私は不思議でならなかった。
ジャンボジェットからボーイング777に変わったとき、今後は、250座席ぐらいで、燃費もよくて採算性のよい飛行機に、順次、入れ替わってくのかと理解した。乗客が多い時期には、増便すればいい。ジャンボジェットのような大型機が一年中必要な路線などまずないし、LCCの登場で路線も便数も増えてきたのだから尚更である。
案の定、エアバス380は、2014年は、新しい航空会社からの発注は一件もなく、製造中止も取りざたされている。西久保慎一社長が強引にエアバス380導入を決めたといわれているが、真相は、私などには到底解らない。エアバス社の、これまた「無謀な戦略」に付き合わされたのかもしれないし、敢えて、渦中に飛び込んでしまったのかもしれない。
そもそも、自由化されてからの航空産業は大博打のような妙な産業になっている。2000億近いエアバス380の購入費が払えなくなって、800億円ほどの違約料を請求されるとは、金額がすごすぎて呆れてしまう。幾ら新しい飛行機を導入しても、後発のLCCとの料金競争が待っているし、果たして乗客を獲得できるかどうかも解らない。これでは、博打といわれても仕方ない。
西久保慎一社長を批判するつもりはないし、私には、そんな資格もない。経営者には、「攻めろ。リスクを避けていては成功はない!」そんなプレッシャーが、常に、のしかかってくる。行け行けドンドンの状態では、冷静な判断ができなくなる。ただただ「逃げたらあかん!」という“天の声”だけが聞こえてくる。
脇に信頼できる参謀を置き、その意見に耳を傾ける。それができればブレーキがかかる。年月を重ねた企業には、こうした参謀がいる。しかし、若くて意気盛んな経営者には、それが中々できない。「成功も失敗も紙一重だ。やるぞー!」どうしても、前のめりになってしまう。大きな傷を負わないと、なかなか自覚できない。やはり、自分を客体化することが最も難しい。
話のスケールも金額の大きさも、社会に与える影響もまったく違うが、自戒の念を込めてそう思う。それにしても寂しい話である。スカイマークが登場したとき、まだLCCなどという言葉は流布していなかったが、ついに、独占状態の航空産業に穴が開いたと胸が高鳴った。なんとかならないものだろうか。