もう20年ほど前のことだが、母の実家が、ついに誰も住まなくなったので売りに出されたことがあった。私にも買わないかという声がかかった。私は、子供の頃から母に連れられて何回も母の実家に遊びに行っていたので、大変思い入れがあり真剣に購入を考えた。
しかし、その時父が『山の斜面の土地は、いつ崩れるか判らないからやめとけ』と助言をくれた。結局、資金がなくて購入を断念したが、父の真剣な助言は、今も強く印象に残っている。
確かに家の裏には山の斜面が壁のように迫っていて、家から道路までは100mほどの急斜面の私道を下る。しかし、母の実家だけがそんな所に建っているのではなく、隣近所は、日当たりの関係だろうか、どこも似たような場所、すなわち山の斜面に立っていた。きっと日本中にそんな住居はたくさんあるに違いない。
8/20深夜から広島で豪雨となり、山が崩れ住宅に土砂が流れ込んで大勢の方が亡くなった。あの映像を見ていて、父の助言を思い出した。
今朝のニュースでも、『この地区には、住宅地が山を切り開く形で広がり、山が崩れて土砂に埋まる可能性がある住宅がたくさんある』と報じていた。
人口が都市部に集中し、都市部の周辺の町がそのベットタウンになり、宅地が山に向かって広がっていく。法的にはなんら問題はないのかもしれないが、『山の斜面の土地は、いつ崩れるか判らない』という父のような警戒心があれば、宅地としては造成すべきではない土地ではなかったのか、と思ってしまう。
3時間で1ヶ月分の雨が降るという豪雨は、確かに想定外かもしれない。今回も「40年ここに住んでいるけど、こんなことは初めてです」そんなインタビューが流されるが、最近は、こんなことが始終起きる。宅地造成の法的な基準を考え直す必要があるのではないかと率直に思う。
山際の家は、山が崩れると思って避難を最優先に考えるしかない。川の近くに立っている住宅は、川が氾濫することを考えていく必要がある。
広島市が作っていたハザードマップには、そういう危険性が明確に示されている。住み替えができない以上、逃げるしかない。
災害から身を守るには、まずは自分自身でどんな備えをするかが肝心だ。行政もあれこれやってはいるが限界がある。父の助言は、自分の身を守ることの大切さを教えたかったのかもしれないと、最近は思えるようになった。災害に遭う前になにを考え何をするかが大事だということだ。