執筆●小林勝久(東京本社)
マヤ文明の名残を残す数々の遺跡、独自の風習を持つ民族。伝統文化が色濃く残るグアテマラでは、今も昔もマヤ系の先住民達が主役です。この国を訪れると、だれもが美しい民族衣装をまとった先住民の姿に目を奪われます。色彩豊かなウイピル(貫頭衣)やコルテ(巻きスカート)を常に身に着けて生活するその存在は、数々の芸術作品の様。そんなグアテマラの民族、遺跡などの魅力をご紹介したいと思います。
グアテマラの古都・アンティグア
グアテマラの第一歩は首都のグアテマラシティーですが、旅の第一歩はアンティグアから。グアテマラシティーから車で約40分、標高約1,540mに位置するこの街はかつての首都で歴史的な建造物や石畳の道が残る静かな古都です。日本で言えば京都、ペルーで言えばクスコのような街でグアテマラを語る上では欠かせません。街はこじんまりとした観光街でもあるため、治安も比較的良く、街中どこを歩いても昔にタイムスリップしたような気分になります。中でも特に魅力的なのは世界遺産にも登録された歴史地区の数々の教会。1773年の地震で崩れた教会が観光の目玉となっていて、バロック様式のカテドラル、かつて中米最大を誇った噴水があるメルセー教会、年中花々が咲き誇るサンタクララ修道院、アンティグアで最も大きな教会施設レコレクシオン修道院など魅力的な見所がいっぱいです。そして街の周りを見渡すと富士山に似たアグア火山が目の前に広がり、コロニアルな街並みと共に美しい風景を生み出しています。こんなアンティグアを起点にグアテマラの旅がスタートします。
先住民族の村々が点在するアティトラン湖
アンティグアから車で約2時間、パナハッチェルへ到着です。ここは「世界で一番美しい」といわれるアティトラン湖岸に位置し、観光の拠点となっています。ここを目指す目的はアティトラン湖周辺に広がるインディヘナの村々です。車で湖周辺を走ると所々に村があります。各村独自の民族が生活していて、その衣装もとても様々。赤を基調としたもの、紫を基調としたものなど様々なウイピル(民族衣装)を身に纏ったインディヘナの人々が次々と現れ、私達の目を楽しませてくれます。村の市場へ寄ってみると、採りたての新鮮な野菜や魚そして肉などが並び多くの人々でにぎわっています。食料や日用品に限らず各村特有の織物や民芸品なども売られていて、気が付くと民芸品を持った子供達や女性に囲まれいつのまにやら商談になってしまうことも。けれど、観光客すれしていない素朴な人々とのやりとりは楽しい旅の思い出になることでしょう。美しいアティトラン湖と色とりどりのインディヘナの人々、グアテマラに欠かせない見どころです。
ジャングルに広がるティカル遺跡
グアテマラには多くの遺跡がありますが、一番有名そしてグアテマラ観光に欠かせないのがティカル遺跡です。まずはグアテマラシティーから空路でフローレスへ。空港を出るともうそこは熱帯の地、蒸し暑い空気が広がっています。ここから車でジャングルをひた走ること約1時間半、目の前に巨大な遺跡が現れるとティカルに到着です。このティカル遺跡はマヤ文明の中でも最大の神殿都市遺跡で、20m、30mにも生い茂るジャングルよりさらに高い神殿の数々には圧倒されてしまいます。ティカルはうっそうとしたジャングルの中、約2km四方に広っていて、全て見るとなると1日では足りないくらいです。
ティカルの神殿は、あたかも人が天上世界に少しでも近づこうとする神々への階段のように、急勾配のピラミッドの上に建っています。数ある中でも一番の見所はIV号神殿で、基壇だけで65mの高さがあり、中米では最も高い神殿ピラミッドと言われています。あたかも人が登るのをあらかじめ拒否しているかのように、垂直に近い急勾配がつけられていてこのピラミッドを一気に登るには相当骨が折れます。しかし、登り切った後の目の前に広がる光景には息を呑みます。一面に広がるジャングルの樹海そしてその先の神殿群、まるでジャングルの摩天楼です。マヤ遺跡の偉大さを感ぜずにはいられない素晴らしい眺めです。
※ 風・通信No26(2006年春号)より転載