プナカ・ゾン
コース名:西ブータン三都周遊とパロの民家でホームステイ7日間
2011年4月29日~5月5日 文●得田 充(東京本社)
バンコク経由でブータンの空の玄関口パロに降立ち、標高3,150mのドチュラ峠を越え亜熱帯気候の古都プナカ、そして首都ティンプー、三都を巡るツアーに同行してきました。
- 東京・大阪⇒バンコク
- バンコク⇒パロ⇒ティンプー⇒ウォンディフォダン
- ウォンディフォダン⇒ロベサ村⇒プナカ⇒ティンプー
- ティンプー⇒パロ
- パロ⇒タクツァン僧院⇒パロ
- パロ⇒バンコク
- ⇒東京・大阪
釘を一切使わない伝統建築、政庁と僧院が一緒になったゾンやその中にある仏教美術などの観光地を訪れますが、この国の見所はいわゆる「世界遺産」的な史跡や景勝地と言うよりは、仏教の教えに根ざした素朴な暮らしや暖かい人間関係の中にあるのではないでしょうか。
「初めて訪れても懐かしさを感じる」と言われているブータン。今回は、この懐かしさという視点から、私がツアー中に感じた事、出会った魅力をご紹介したいと思います。
五感を呼び覚ます目覚め
プナカの夜明け
ここは鳥の楽園
バードコール
古都プナカ、標高1,300mの亜熱帯気候で二毛作が可能な豊かな土地です。この町では夜明けと共に鳥が鳴きだし、アラームに起こされることに慣れた体を、自然の一日の始まりがゆり起こしてくれるのです。モーニングコールならぬバードコールは、日本で聞きなれた、スズメ、カラスの声だけでなく何種類もの声が行き交います。朝のひと時に、ふと目を向ければ見たことのない鳥に出会えるかも知れませんよ。
自然豊かなこの地では、自由に暮らす鳥の楽園の中に人の営みがあるような感覚でした。
大きな命 小さな命
翌日はティンプーでの宿泊。日中はこれ以上はないというリラックスした体勢で寝ている犬たちが、町が寝静まるころになると会議を始めるのです。
「今日は日本人を多くみたけど今は連休か? そっちはどうだい?」「私のところはやっぱりアメリカ人が多いね」「いやいや最近はインド人が増えてるぞ!」などと話しているのでしょうか。今度はまるで犬の世界に迷い込んだようです。そんなことに思いを巡らせていると…ものの数分で寝入ってしまいました。
殺生を善しとしないこの国では、犬もいじめられた経験がないようでまったく人に怯えを見せませんでした。しかし食料の多い都市部では、犬が増えれば野良犬の町になりかねないので政府は去勢をすることで対応しているようです。捕まえて保健所に連れて行くことが学生の良いアルバイトになっているそうで、なんともブータンらしい政策ですね。
変わらぬ原風景
麦畑
夕餉の支度
信号が1つもないティンプーですが、現在、高級ホテルやアパートなど建設ラッシュが起き、田園風景から都市に移り変わる真っ最中です。GNH政策においても、世界中から注目を集めています。しかし町を一歩出ると、まだまだそこには変わらない原風景が残っているのです。
田んぼのあぜ道を歩いて訪れる子宝の寺として有名な「チミ・ラカン」でのことです。お堂自体は20人程度でいっぱいになる小さなお寺なのですが、そこで民族衣装を着た女子高生くらいの3人組と一緒になりました。彼女たちは神妙な面持ちで五体投地をし、お坊さんの手の上で真剣にサイコロを振っていました。どうやら恋占いのようです。よい目が出たのか何やら言葉をもらい、安堵の笑顔で帰って行きました。
この国の魅力はブータン人のアイデンティティーを形成する、彼らにとって当たり前の働く姿、遊ぶ姿、祈る姿、そんな生活を身近で感じられるところではないでしょうか。
大袈裟に言うと、先祖が生きた日本の古きよき時代を目にしているような、快適で便利な生活の代わりに現代社会が失ったものを気づかせてくれ、これから目指す未来を示してくれているような気がしました。
親切で礼儀正しく、穏やかで誇り高きブータン人。
「Kuzug Zang Pola!(クズ・ザン・ポラ!)」と話しかければ、あなたが求めているものが見つかるかも知れませんよ。
おばあさんは川へ洗濯に
花を並べて遊ぶ子供たち
家族の大事な時間
畑 大きく育て