添乗員報告記●西ブータン三都周遊とホームステイ7日間(2008年5月)~タクツァン僧院トレッキング編~

断崖の寺院 タクツァン僧院

2008年4月29日~5月5日  文●池内 明穂(東京本社)

 

その昔ヒマラヤ地方にチベット仏教を伝えた聖者グル・リンポチェが初めて8世紀に西ブータンを訪れた時、空飛ぶ虎の背に乗り飛んできたという伝説が残るブータン随一の聖地、タクツァン僧院。彼は洞窟内で3ヶ月間瞑想したとのこと。後に、ドルジ・ドロという忿怒尊の姿に変身し、パロ地方の土着の神々を調伏し、仏教に改宗させたと伝えられています。その標高3,100メートルの断崖にへばりつくように建つ寺院は、見る者を釘付けにし、ブータン人なら誰もが一度は訪れたいと思う聖地の一つとなっています。以前は許可されていなかった外国人観光客の内部拝観ですが、現在は私達も、ブータンの方々と同じように、「虎のねぐら」と呼ばれるタクツァン僧院を参拝できるようになりました。(僧院の都合で内部拝観できない場合もあります。)


バスから見えたその先は・・・

へばりつくように建つ

晴れ渡り澄みきった新緑の5月初旬。

少し肌寒く感じる標高約2,300m、ブータンの空の玄関口であるパロで朝食を摂り、今回のツアー参加者の皆様は準備万端、期待に胸を膨らませバスに乗り込みました。

15分ほどバスを走らせ、『皆さん、右手の崖をご覧下さ~い』というガイド・ウゲンさんの指差すその先には、黒く険しく聳える断崖に、白く小さくへばりついているタクツァン僧院。

突然目にした光景に、車内は一気に歓声とどよめきが起こりました。

さぁ、トレッキング開始

マニ・チュコルが

見えてきます

登り口までバスで行き、そこから片道約2時間のトレッキングの開始です。標高差は約800メートル、垂直に切り立ったのその岩壁は、これから登ろうとする私たちをまるで拒んでいるかのように、雄々しく目の前に立ちはだかっています。

林の中を進むと程なくして、3つのお堂が現れました。白いその中には大きなマニ・チュコルと呼ばれる水車でまわるマニ車があります。回転する度に経文を一度唱えたのと同じ功徳が積めるというマニ車が、世界各国から訪れる登山者の安全を祈るかのように、絶え間なく廻り続けるのを後にし、いよいよ九十九折の登山道を進みます。

登山中の景色もまた素晴らしい

緑の松林、時折目にする石楠花の花々、眼下に広がる田植え前の田園風景、そしてその奥に青白く連なる標高7,000メートルの峰々が重たい足を自然に前へ前へと運んでくれます。

登りはじめて約1時間、たどり着いた休憩所ではお茶とクッキーを頂きました。赤い石楠花、色鮮やかなタルチョの間から見える僧院はまだまだ小さく道のりは遠いですが、目線はほぼ同じ高さになっていました。

すでに標高は2,800メートル、空気も薄く、お客様も体調、体力の差が出てきます。深呼吸、水分補給をしっかりしていただき、個々のペースゆっくり歩いていきます。

お茶屋さんの中でストレッチ

タルチョの間から

遠くにタクツァン僧院を望む

山々を見下ろす


さらに谷をぐるっと回り込む形で、歩くこと1時間。「展望台」に到着です。僧院を見下ろす高さにあり、写真撮影には絶好のポイントです。が、小さなスペースの下はなんと断崖絶壁!撮る方も撮られる方も、緊張しました。谷にたなびく祈りの旗(タルチョ)はいくつかが途切れ、風が強く吹き付ける厳しい環境であることを物語っています。そこから先は、黒い岩壁を這うように作られた幅の狭い石段を下っていきます。谷の向こうのその美しい外観に見とれて、足を踏み外さないよう、注意が必要です。

笑顔で到着

急な石段

最後の石段

僧院はもう目の前

最後の難関である滝の脇からの石段を登り、ついに到着!登り切ったという達成感、皆さんの笑顔が印象的でした。入口でカメラなどの荷物を預け、受付を済ませます。現存する伽藍は1998年消失後、2004年に再建されたものですが、グル・リンポチェが瞑想したとされる洞窟は当時のままです。グル・リンポチェの八変化相の仏画や仏像、また仏塔など4箇所をウゲンさんの詳しい説明とともに拝観し、その後見晴らしの良い踊り場に行きました。

新緑の山々を見下ろし、心地よい風が頬をなで、汗がすっと引いていきます。ブータンの時間の中で、自然と入ってくるチベット仏教の教えは私達に満たされた「空っぽ」の心を届けてくれました。

到着!

タルチョの下で記念撮影


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