ラサはチベット語で「神々の土地」の意。高層ビルが立ち並び、車が頻繁に行きかうなど、都市化の波が押し寄せているラサは、映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」のイメージとは程遠くなっていますが、今もなお巡礼者をひきつける聖地なのです。ジョカン寺やポタラ宮、そしてバルコル(八角街)の周囲に散在する小さなお宮や仏教各宗派の分院など、ラサにはお寺や僧院が密集しています。聖なる日やお祭りの日には、ラサ人だけでなくチベット文化圏いたるところから、(ある人は国境を越えて)、ラサに巡礼に訪れます。今でもラサでは、バルコルや巡礼路で五体投地をするチベット人たちに、深い信仰心を感じることができるでしょう。
*** ラサ市内の見所 ***
天空の宮殿・ポタラ宮
チベット仏教、チベット世界の象徴ともいえる天空の大宮殿。ポタラとは「観音菩薩の住う地」、つまり主であり観音菩薩の化身でもあるダライラマ法王の宮殿という意味で、その存在自体がチベット人の信仰の対象となっているのです。 『俗』を表す白宮と、『聖』を表す紅宮の絶妙のコントラスト。迷路のような通 路や階段。増築を繰り返していたにもかかわらず均整のとれた、見応えある一大建築物です。(※内部の観光は1時間以内に限られ、写真撮影は禁止。液体物の持ち込みも禁止だが売店で購入可能)
チベットで最も聖なる寺・ジョカン(大昭寺)
俗称は、本尊の釈迦牟尼像(ジョウォ)を祠るお堂(ラカン)を縮めてジョカン。寺院本来の名はトゥルナン寺という。本尊のチベットで最も聖なる釈迦牟尼像は、7世紀にチベットを統一した吐蕃王ソンツェン・ガムポの王妃・文成公主が唐から嫁入りする際にもたらされたと言われています。今も寺の入り口では、敬虔な仏教徒が朝から五体投地を繰り返しています。
巡礼路・バルコル(八角街、八廓街)
ジョカン寺の周囲はチベット仏教徒憧れの巡礼路。毎日散歩がてら巡礼する地元の人や、五体投地で進む田舎から来た巡礼者、ビデオカメラ片手の観光客まで、皆で時計廻り。1日中人の流れが絶えません。特に朝と晩は巡礼の人通りが多くなります。
ダライ・ラマの夏の離宮・ノルブリンカ
歴代のダライ・ラマが建てたいくつもの離宮があり、夏の離宮として使われました。メインの見所はダライ・ラマ14世が実際に生活していたタクテン・ミギュル・ポタン。ダライ・ラマ14世はここからインドへ亡命しました。ノルブとは宝、リンカとは公園のこと。現在は博物館兼公園で、休日や祝日には多くのチベット人で賑わいます。ショトゥン祭にはアチェ・ラモ(チベット・オペラ)が上演されます。
河口慧海や多田等観も学んだ・セラ寺
ラサの北にあるゲルク派の大僧院で、1419年ツォンカパの弟子によって建てられました。僧侶たちが修行のひとつである「問答」をする姿を見学できる寺としても有名。約100年前、河口慧海や多田等観もこの学院に学んでいます。ショトゥン祭には大タンカが掲げられ、地元のチベット人や巡礼者で賑わいます。寺の境内をぐるりと囲む巡礼路があり、ラサの街やポタラ宮が遠望できます。
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チベット最大の僧院・デプン寺
ラサの北西約12kmのところにあるチベット仏教ゲルク派最大規模の僧院で、ポタラ宮に移り住むまでダライラマ1世~5世の居城でもありました。1416年に創建され、チベット全土から来た1万人もの僧が学ぶ巨大な僧院都市でした。モンゴル僧ロブサン・サンボーとしてラサに潜入した西川一三も、ここデプン寺に学んでいます。毎年ショトゥン祭で大きなタンカが掲げられる事でも有名です。
サンゲ・ドゥングとポタラ宮の巡礼路
ポタラ宮の屋上から右手に見えるチャクポリ(薬王山)の丘。その裏手にはサンゲ・ドゥングと呼ばれる巨大な岩に掘り込まれた大量の磨崖仏や、経文が彫られた大量の石(マニ石)が整然と積み上げられたマニ塚があります。また、ポタラ宮の巡礼路はツェコルと呼ばれ、ポタラ宮とチャクポリの間にある大チョルテンから始まり、市民の憩いの場となっている池のある公園を過ぎ、ポタラ宮正面の広場を通り、約40-50分で1周できます。
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ラサ市内地図
毎年夏には、チベット最大の祭典「ショトゥン祭」が、デプン寺の大タンカのご開帳を皮切りに始まります。春からの長い修業を終えた僧侶に人々がヨーグルト(ショ)を施したのが始まりと言われています。拝むだけで御利益があるというデプン寺の大タンカは100人近くの僧侶によって運ばれ、1年に1度だけこの日の夜明けとともに開帳されます。このタンカを一目見ようと、近隣からは何万という巡礼者が集まりラサ中が熱気に包まれます。まさにチベット文化の集大成とも呼ぶべき年に一度の大イベントです。
***ラサ郊外の見所***
ゲルク派の総本山・ガンデン寺
ラサから東へ50km。ラサの名刹ガンデン寺は4,200mの小高い丘に鎮座しています。文化大革命で徹底的な破壊を受けましたが、徐々に復旧が進み現在は数百人の僧侶が修行しています。お寺の周囲には1時間ほどで回れる巡礼路がついており、7~8月にはブルーポピーを始め高山植物が美しく咲き乱れ、フラワートレックが楽しめます。毎年夏にはセタン祭が行われ、本堂内に貴重なシルクのタンカが、境内に巨大なタンカが掲げられます。
巡礼路で夏の高山植物も楽しめる ガンデン寺のセタン祭
【旅のヒント】ガンデン寺の巡礼路でハイキングを楽しむ
トルコ石の湖・ヤムドク湖
チベット4大聖湖の1つヤムドク湖は、「天女が舞い降りその姿を変えた」といわれています。ラサを離れヤルンツァンポを渡り、羊やヤクが放牧される九十九折りの道を上り詰めると、標高4,750mのカンパラ峠の眼下にはエメラルドグリーンの湖が広がります。初夏には草原が広がりブルーポピーなどの高山植物がここそこで花を咲かせます。
天空の湖ナムツォ
琵琶湖の3倍もあるという海のようなナムツォ湖。チベット語で「天の湖」の意で、その名の通り標高4,718mもの高所にあります。湖面は青く光り、湖の周りに美しい草原が広がる景勝地ですが、いまでも行者が湖畔で修行している聖地でもあります。大自然のスケールの大きさにチベットの信仰心の源泉まで感じ取ってしまう、そんな風景が広がっています。観光シーズンは6~9月です。
夏の楽園 ダムシュンの大草原と天空の湖ナムツォ
ダムシュンの大草原
広大な草原の中で遊牧民がヤクや羊を放牧しているダムシュン。ラサから僅か160kmですが、そこは写真集や写真展で見るチベットのイメージそのままの大草原が広がっています。
夏の楽園 ダムシュンの大草原と天空の湖ナムツォ
ラサ郊外地図
ラサは思ったよりもずっと都会。期待していた大自然や、素朴な人々の生活が見られない、って声も耳にします。そんな方は、ラサ近郊で簡単なハイキングはいかがでしょうか? 静かな農村を歩いたり、聖地や小さなお寺を訪ねたり、ラサにいるのとはちょっと違ったチベットが見えてくることでしょう。