巡礼路を楽しそうに歩く地元の人
すっかり近代化したラサですが、巨大なデパートや、近代的なアパートに隠れるように、人々の祈りの場が点在しています。そんな光景を目の当たりにすると人々の篤い信仰心はまだまだ健在なのだと、なんだか嬉しくなってしまいます。 ラサへ行ったら誰もが訪れるジョカンやバルコル以外の、チベットの原風景に出会う、ラサのお勧め巡礼スポットをご紹介します。
ラサ庶民の祈りの場 サンゲ・ドゥング
ポタラ宮の屋上から右手に見えるチャクポリ(薬王山)の丘。その裏手にはサンゲ・ドゥングと呼ばれる巨大な岩に掘り込まれた大量の磨崖仏があり、いつもその前でたくさんの人々が五体投地をしています。「1,000のブッダ」の意味を持つこの磨崖仏は、11世紀にあるお金持ちが自分で仏像を買えない貧しい人々のために祈りの場として作らせたそうです。観光客がくることはほとんどありませんが、今でも地元の人々が朝夕にお祈りに訪れ、祈りを捧げる神聖な場所です。ラサには街の中心地を囲む長さ約10kmのリンコルという巡礼路があり、ここはその一部になっています。
廻ってこそ意味がある ポタラ宮の巡礼路
観光客にとって、現在の主のいないポタラ宮は、内部を巡り、歴史的な解説を聞く場所で、ほとんど博物館同然の感覚です。しかし、一般のチベット人巡礼者にとってこの建物こそが、観音菩薩あるいは、化身であるダライ・ラマそのものなので、内部を巡るだけでなく、その外周を巡礼(コルラ)してこそ、そのご加護があると考えています。ポタラ宮正面の広場にある大チョルテンから始まる巡礼路は、市民の憩いの場となっている池のある公園を過ぎ、マニ車を回しながら、約40-50分で1周できます。広場の脇には巡礼者のくつろぐ茶館もあり、時間があれば、雰囲気たっぷりのチベット空間を味わえます。
ハイキング感覚で歩く セラ寺の巡礼路
問答で有名なセラ寺を参拝する観光客は多いことでしょう。しかしながらセラ寺の裏手までコルラ(巡礼)する方は、よほどのチベット・マニアと言ってもいいかもしれません。そこには、聖水の湧き出る泉、昔の聖人が瞑想をした跡などがあり、多くのチベット人巡礼者は、セラ寺の参拝の後には必ずこの巡礼道を歩き、「功徳を積む」のです。マニ塚や真言の刻まれた石に囲まれながら、そしてセラ寺を眼下に見ながら歩くその巡礼路は、歩いているだけで気持ちがよくなって(時にはハイになって!)しまうという、「マジック・トンネル」のようなのです。もちろんそこは、巡礼路。我々の心の状態が反映されるようになっているのです。遠方にラサの街が見えて、その中にポタラがポツと白く小さく見える様は、なにかしら感慨を引き起すことでしょう。