夏の反省点とこれからの展望

夏の反省点

暑い夏がようやく終わり、やっと秋らしくなって来ました。弊社の夏のツアーに御参加下さったお客様に心から感謝申し上げます。また、アンケートで貴重なご意見をお寄せ頂いた皆様にも厚く御礼申し上げます。
ツアー終了後、ご参加いただきましたお客様にはアンケートのご協力をいただいておりますが、その中でいくつか厳しいご意見も頂きました。特に、モンゴルに関しては、

(イ) 以前、“ほしのいえ”で直接(原に)クレームしたことが改善されていない。乗馬インストラクターは、またしても殆ど指導らしい指導が出来ず、ただ歩くだけの3日間に終わった。
(ロ) 原社長は、ウランバートルに支店を設置して現地と一緒に旅作りをし、一人一人のお客様を大切にすると言っているが、別のモンゴルの会社に手配を丸投げして風の旅行社のことすら全く知らないガイドが付くようでは裸の王様じゃないか。

といった趣旨のご指摘を受けました。両方とも「嘘を言うな」とお叱りですから、弊社の信用問題に繋がります。何としても改善していかなければなりません。

イ)に関して、原因の一つは、インストラクターを事前に指導できていない現地支店「MONGOL KAZE TRAVEL(MKT)」の力不足にあり、もう一つは、ガイドの質が一定のレベルに達していないということにあります。インストラクターを現場で指導するのも、ガイドの大きな仕事です。

少しモンゴルのガイド事情に関して触れさせて頂きたいと思います。決して言い訳をしようということではありませんが、以下の事情を踏まえないとどうしてそんな改善方法になるのか御理解を戴けないと思うからです。
最も大きな問題は「ガイドが職業として成立していない」ということです。ガイドの仕事は夏の4ヶ月程の間しかありません。従って、ガイドの収入のみで生計を立てていくことは困難です。どうしても、学生の夏のアルバイトであったり、他に仕事がないのでその間の一時的な仕事という実態が一般的です。10年以上のベテランガイドがそろっているネパール支店のスタッフとは全く違います。

弊社の支店では「これでは質の向上と継承ができない」と判断し、数名のガイドを年間雇用しボーナス制も導入しています。ところが、彼らは、日本語の読み書きができる大学出の優秀な人たちです。それが故に、ガイドとして2〜3年働き、日本語がかなり上達してくると、もっと収入の高い仕事を求めて日本に来てしまったり、夢を求めて次のステップに転身してしまう者が多いのです。こうした事態を強制的に食い止めることはできません。では、スタッフのサラリーをもっと高くすれば良いのかというと、人間の思いは、本質的には形而上学的な欲求が満たされてこそ充足するという問題があります。つまり、お金だけではなく、夢や生き甲斐そして希望があるのかということが重要です。昨年のSARSで、モンゴルへ行く日本人は70%以上減少しました。
本当につらい中、彼らは何とか我慢して今年の夏を迎えました。ただ、一昨年の質に戻して且つ向上させるのは並大抵ではなく、残ったメンバーで何とか新人を指導しながら乗り切りましたが、その結果「日本語のレベルもガイドとしての力も不十分だったが、一所懸命やってくれた。素朴でよかった。」という評価を多く頂きました。これは、モンゴルツアーを始めたばかりの会社ならいざ知らず、弊社としては、とても自慢できる様な評価ではありません。なんとかお客様には喜んで戴けたようですが、結果オーライの世界でしかありません。

しかし、前述の様なガイド事情がモンゴルにはあり、経験豊富なガイドをすぐに揃えることは到底できません。それならばどうするのか、核になる人間をしっかり育て、その人間が風のコンセプトを具体的に新人達に教えていく。シーズン始めに研修をしっかり行い徹底させる。そして、日々フィードバックして検証するシステムを再構築する。これしかないのです。何も新しいことではありません。従来もやって来たことですが、SARSを経験する中で一端は途切れてしまった様な気がします。何とかもう一度体勢を建て直さねばなりません。

ロ)のクレームで問題になった「丸投げ」というのは「列車で行くゴビ草原コース」のことです。そもそもこのコースは当初からモンゴル鉄道の協力を得て、モンゴル鉄道の旅行会社と一緒に作ってきたツアーです。彼らには十分に風のコンセプトを話して共有してきたのですが、今回、そのコンセプトを全く理解していないガイドを雇ってしまったということです。ガイドが悪いというのは、それをマネージメントしている私たちの責任です。

幸いモンゴルへ行ったお客様の殆どは満足戴けたようで、アンケートの多くは決して悪いものではありませんでした。しかし、件数の問題ではなく、この(イ)と(ロ)に関しては弊社の姿勢を大きく問われたものだと受け止めました。
他にも色々ありましたが、特に日本側に対するものでは「書類の送り間違いや、記載ミスが多い」という御指摘を頂きました。これは、何とか具体的な方法を考えて対処しないといけません。

変わりゆく世界情勢と平和への祈り

さて、今年は鳥インフルエンザで昨年のSARS騒ぎが再燃かと心配されましたが、大きな問題には至らず安堵しておりました。ところが、イラクで人質になっていたネパール人13人が殺害されたと9/1の朝のニュースで報道され大きなショックを受けました。「なんでネパール人なんだ?貧しいが故に出稼ぎに外国に出ていた彼らが何で殺されなきゃいけないんだ。」と行場のない怒りが私の中に込み上げてきました。
この殺害に抗議する市民の一部がカトマンズ市内で暴徒化して騒然となり、その日の午後に、カトマンズ市内に外出禁止令が出される事態となりました。彼らが怒るのは当然です。ただ、そんな客観的なことを言っている場合ではありません。その時点でネパールにいらっしゃるお客様の安全を確認し日本の緊急連絡先に伝え、これから出発されるお客様に状況を説明せねばなりません。幸い、弊社でも予想した通り短期間で収まりましたので一時的な対応で済みほっとしました。歴史は、矛盾に満ちしかも愚行を繰り返しています。ブッシュ大統領は、フロリダの約20万人のユダヤ人票を獲得するためにイスラエルのシャロン首相の暴挙を支持していると言われています。本当でしょうか?そうだとすれば、権力保持のために人の命を犠牲にしているということにならないでしょうか。こんなことが許されるはずがありません。歴史は、そうした悪を罰して来たこともまた事実です。11月2日は、米大統領選挙の投票日です。この結果が、今後の世界情勢に大きく影響することは確かです。
どうか、良い方向に向かって欲しいと願うばかりです。

※風・通信No21(2004年冬号)より転載

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