姜尚中(カンサンジュン)氏の「悩む力」(集英社新書)を読んでみました。かなり最近話題になっていますからお読みになった方もいらっしゃると思います。著者は、夏目漱石とマックスウェーバーを対比していますが、夏目漱石はともかくマックスウェーバーを読んでいる人は少ないと思います。私も、ここで取り上げられている夏目漱石の作品は殆ど読んでいますが、マックスウェーバーは読んだことがありません。分らない言葉も結構出てきますが我慢して読み進むと、著者がなんとか平易な言葉で読者に伝えようという思いが伝わってきます。
姜氏を最初に知ったのは「朝まで生テレビ」という番組です。なかなか頭の切れる人だなあという印象と、どこか重たい雰囲気を持ちながらも、ぐいぐいと強く引きつけられたことを覚えています。
姜氏は、1950年生まれの在日二世で、団塊の世代にほんの少しだけ遅れてきた世代です。同書でいう「末流意識」とはそんな背景があるのでしょう。在日が故のアイデンティティーの問題はあるものの、姜氏の青春時代の悩みは、表現方法や内容は異なりますが、誰にでもあるように思います。自分が、何者になっていくのか分らないまま不安に押しつぶされそうになる。自由であるが故に苦しい。
そして、渦中にいるうちは、もがいてもどうにもなりません。過ぎ去ってみれば、悩みの形が変わっていくことで解決されたように感じますが、ずっと形を変えて残ります。年を取ると違う形でまた浮上してくるそんな気もします。私は、大学で倫理学を専攻しましたが、教授から、「年取ると、また元へ戻ってくるよ」とよく言われました。そうかもしれません。
それでも、若いときに、傍観者ではなく当事者として悩むことが人生には必要でありそれは素晴らしいことだと私も思います。しかし、最近は悩むこと事態を避けてしまう、そんな若者が増えているそうです。
是非、高校生や大学生にこの本を読んでもらいたいと思います。果たして、私の息子たちはどうか。読まないだろうなあと、思わず嘆息してしまいますが、「積読」でもいいから薦めてみようと思います。