よき親とは

つむじかぜ416号より


「よき指導者とは、教わる側が何を考え、どう思っているかをいつも把握している人です」日本人で唯一のメジャーチャンピオンであるプロゴルファーの岡本綾子はそう言い切る。

日本では、子供が考えていることなど無視して、指導者が、自分の考え方を押し付ける場合が多い。確かに、子供の考えていることは、思慮が浅く自分勝手だったり、すぐに諦めてしまって楽な方に流れてしまから、大人が強制してでも正しい道に導くべきだ。という考え方は、正当である かのように聞こえる。

しかし、たとえ子供であれ、個を尊重し、決して無理やり従わせることはしない。個の確立と自立こそが大切だ。という考え方もある。そう考えると、幾ら結果が良くとも、個が否定され強制されて得た結果なら意味がないということになる。

個を尊重するなんて理想論だ。子供に「自分で考えて行動しなさい」と言って放り出すだけじゃあダメになってしまう。小学生から厳しく育て、中学、高校では、部活で上下関係を学び、規律ある行動が取れる大人に育てなくてはならない。そういう指摘もある。事実、放任主義の親の子育てが問題にされることも多い。

こうした意見の対立は、今に始まったことではない。どうやって自分の子供を育てるかは、それぞれの考え方だ。

私は、どうだったか振り返ると、子供が小学生の内は厳しく、中学生以降は自由にと考えてやってきた。だから、子供の頭を叩いたりもしたし、理不尽な叱り方もした。かつて、自分が親父に叩かれた時に感じた恐怖心や嫌悪感を棚上げにして同じことをした。到底、個を尊重し子供の思いに耳を傾けるような父親ではなかった。

だから、今話題になっている体罰などを批難する資格が、自分にあるのだろうかと自問自答してしまう。自分に染み込んでいる感覚は、あの監督と同じではないだろうか。テレビに登場するキャスターや評論家の方々は自分は決して暴力など振るったことがないという態度で話しているが、本当だろうか。誰しも、自戒の念を込めてこの問題を自分の問題でもあると考えないと本質的な解決には至らないように思う。

岡本綾子の言葉を置き換えれば、「よき親とは、子供が何を考え、どう思っているかをいつも把握している人です」ということになる。これが、なかなか難しい。対話が大切だということだけは分かるのだが、、、実に難しい。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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