人類の進化とガン

つむじかぜ430号より


日曜日の夜9時からは、NHKスペシャルを観ることが多い。先週の日曜日は、「病の起源第1集 がん ~人類進化が生んだ病~」という表題で、 人間が何故ガンという病気をかかえるようになったのか。その謎を、遥か昔、多細胞生物の発生にまで遡って解き明かすというものだった。

そもそも、ガンとは、細胞が分裂していくときに起きる細胞のコピーミスが原因だという。即ち、多細胞生物になったときにガンの発生リスクをかかえたというわけだ。あの恐竜だって、ガンに侵されていたというから大変古い病である。

しかし、自然界の動物では、ほとんどガンは見つからず、人間の隣人であるチンパンジーでさえ、ガンで死ぬことは極めて稀だそうだ。“人間だけが、神の呪われたかのようにガンにかかり易くなった。その秘密は、まさに、人間の進化の過程にある。”と番組は進んでいく。

大きな原因の一つは、人類とチンパンジーが分岐した時にある。ご存知のように、人間とチンパンジーの遺伝子は99%同じだが、1%の違いの中にガンにかかり易くなった原因が潜んでいる。それは何か。

チンパンジーには、繁殖期になるとメスが生殖器を大きく腫らすように、明確な繁殖期があり、オスは、そのサインを感じ取り精子を製造する。ところが、人間は、オスに狩をして食料を運んできてもらうために、メスが交尾を「褒美」としてオスに与えるようになり、オスは、年中、精子を製造するようなった。その細胞分裂を絶えずする仕組みを、がん細胞が真似をしたというのだ。だから、がん細胞は、どんどん分裂して大きくなる。ガンのことを云々する以前に、こんな説明をされるとオスの哀れさを感じてしまう。

そして、もう一つの大きな原因は、人間が二足歩行を始めたことで手が歩く機能から自由になり、道具を使うようになって、脳の巨大化という現象が起きたことに関係がある。その脳の巨大化をもたらした物質が分かってきたが、それが、がん細胞においても同じ働きをし増殖を促進しているというのだ。

最近、こうした番組を見ると驚くことばかりだ。こんなに色々な研究が進んでいるなら、ガンなど克服できそうなものだ。実際、ガン細胞にこの増殖を促す物質だけを取り除くガン治療薬既にできていて、これから臨床実験に入るそうだ。この薬は、この物質だけに作用するので副作用がなく、且つ、たった一日で、大幅な改善が見込まれ、殆どのガンに対応できるというから驚きだ。

しかし、これは、アメリカでの話だ。日本でこの薬が使用できるようになるには、何年も待たなくてはならない。今現在、ガンに悩まされている方が、この番組を観たら、すぐにでもその薬を投与してくれと思うだろう。ガンワクチンの件もよく聞くが、ガンの死亡率が大幅に改善されたという話は、聞かない。仮に、最先端医療が報じられても、実際の医療現場では、それを受けられる人は極僅かだ。

番組は大変興味深かったが、何とかならないものかとモヤモヤ感が残ってしまった。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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