マウンテンバイクでラサ周辺の野道を [LHASA・TIBET]

行くなどとはほとんど想像だにしていなかった。 今の今まで。 車もしくは徒歩でチベットの奥地に入っていくことに慣れすぎていた僕には、マウンテンバイクの機動性や楽しさは、(一昔前流行った言葉でいうと)全くの想定外!であった。

僕が飛び入りで一日だけ参加させてもらったツアーは、『自転車で行くチベット・ラサ −自転車でタシデレ!気軽に郊外の農村散策−』。 やまみちアドベンチャー主宰、丹羽隆志氏を招き、ラサ空港〜ラサ市内、そして郊外の田舎道を一日ラサ観光を挟んで自転車で廻るツアーである。

マウンテンバイク(MTB)には僕は昔から興味はあったが、実は変なプライドのようなものが邪魔をしていて、盲目になっていた。 ヘルメットをかぶり、MTBに乗って田舎道、山道を走るのは、いかにも「文明の象徴」の最たるもののようにみえ、僕はそれには賛同したくないなど、若さゆえの偏狭さが邪魔をしていたのだ。 車こそ「文明の象徴」であるのに。 おそらくは、田舎道を走るMTBが産業社会と自然との間に容赦なくはりめぐされたバリケードを哀しくもキッチュに、しかし非常に雄弁に体現しているように見えたためである。

でも今回、丹羽さんのツアーに参加して、そんなのはどうでもよくなった。

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(ここはラサからたったの40分。 雪山近くにある遊牧民の部落へ向かっていくMTB隊。)

(僕の理解した)丹羽さんのMTB哲学(?)は、「汗をかいてハァハァしんどい思いをしながらでは、MTBの真髄は味わえない。 ゆっくり、風景を楽しみ、寄り道をしながら。 寄り道ほど楽しいものはないから」である。 その哲学通り、遊牧民のテントにお邪魔したり、ミニ・トレッキングをして標高4000メートルを超える丘へ登ったり、半農半牧のお家にお邪魔して、とれたてのヤクのミルクやふかし芋をごちそうになったり・・・ いろいろであった。 その後は、緩やかな下り坂を、刈り入れの終わった麦畑を横目で見ながら、風の流れを感じ、雲の流れを感じ、自分の中に流れて込んでくる「何か」を確かな感触で感じながら、ゆっくり降りていくのである。

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(高度4000メートルを目指す、MTB隊)

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(民家でおいしいヤクミルクとふかし芋をご馳走になる、MTB隊)

猫は自分でドアのノブを回すことができない。 自分でノブを回すことができれば、外に開ける世界は無限大で、草むらで虫を追いかけることもできれば、木洩れ日のさす木のそばで日向ぼっこもできれば、恋人だって探すこともできるのである。 猫にとってみれば、「ドアのノブを回す」という人間にとっては単純な(人間のために作られたのであるから当然!)行為が、まるで二次元から三次元の世界へ繰り出すのと同じような意味をもつ。 今回僕が経験することができたのは、大げさだが敢えて表現すると、まさにこの「高次元への移動」である。 

チベットの田舎の巡礼地に行くときは、車か徒歩以外は「考えられなかった」。 MTBは、機能性が高かったり、ただ単に快適なだけでなく(超軽いギアの意味や、デコボコ道の衝突を和らげてくれるサスペンサーの存在の意味を今回初めて体感した)、確実に高揚感、開放感が体験できる乗り物である。 もちろんチベットという場所柄のファクター、そして何よりも丹羽さんというMTBを心の底から楽しまれている方と一緒に時間を過ごすことができたことが大きいであろう。 丹羽さんありがとう。

さて、今回のMTBツアーに参加されたお客さんは、丹羽さんを除いて、男性1名、女性5名である。 運動好きな方も、普段特に運動をされていない方もみなさんそれぞれとても楽しまれていた。 (子供みたいになって?)楽しみすぎたせいか、一日の終わりの夕食であったチベット鍋、「風のチベット」史上、最速スピードかつ最大消費量(一人当たり)を記録した。 それほど昼間楽しむことにエネルギーを消費していたのである。

食べ終わった後、お客さんがひとり、「あらら、鍋の写真撮るの忘れちゃったわー」とおしゃっていたのが印象深かった。

Daisuke Murakami

PS 丹羽さんのブログにラサ自転車ツアーの素晴らしい写真があります。 

9月18日 
天気 ほぼ快晴
気温 7〜19度 (朝はやや冷えます)
服装 上はシャツ/Tシャツの上に、薄手のジャンパー、長ズボンが一般的です。日焼け対策は必須。 空気も非常に乾燥しています。 念のため、雨具も必要です。