ピャン寺は、レーから車で30分ほど西に行ったところにあるディクン・カギュ派の寺だ。
(ピャン寺の全景)
丘の上にそびえる寺の外観は、建物が赤と白に区分けされているため、遠くから見るとポタラ宮殿のようでもある。
16世紀に建立された寺院の内部には、保存状態のよい壁画が残っている。
(ピャンの壁画)
この寺では、年に一度ピャン・ツェドゥプという祭が行われる。
僧侶たちが仮面を付け踊りを舞う。仮面舞踏は二日間にわたって演じられる。
わたしは、二日目の演目を観劇した。
(ディクン・カギュ派の座主)
今年の祭は、特別であった。普段はインドのデーラデゥンにおられるディクン・カギュ派の座主がピャンに滞在していたからだ。
座主は、つい最近、日本からインドへ戻ってこられたそうだ。大阪でディクン・カギュ派の寺の落慶法要に参加されたとのこと。
(ピャンツェドゥプの開始)
仮面舞踏は、寺の中庭で行われた。
着いてから始まった演目は黒帽の舞であった。吐蕃王国最後のランダルマ王を暗殺した僧侶ラルンペルキ・ドルジェの故事にもとづいて演じられる踊りは、最後に魔物をかたどった人形(ダオ)を各種の武器で解体するという仕草で終わる。
魔物は、同時に煩悩をシンボライズしているそうだ。
解体にいたる踊りと動作は、村人にとってカタルシスをもたらすものでもあるようだ。
去年も同じ演目を観劇したのだが、今年の黒帽の舞のときに、最初に現れたのは、ピャン寺の管長であるトクダン・リンポチェであった。ディクン・カギュ派の座主のために特別に踊りを披露されたのだ。
(トクダン・リンポチェの舞)
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小柄なトクダン・リンポチェは、他の僧侶の踊り手たちとは異なり、白目をひん剥いて、まるでトランスにでも入ったかのように観客を圧倒しながら黒帽の舞いを踊った。いままでに何度も仮面舞踏を見てきたがこのような表情で踊った踊り手に出会ったことはなかった。往年のチベットの仮面舞踏は、このような表情で踊ったのであろう。