ラダックで最も栄えている寺は?といえば、ティクセ寺であろう。
以前ブログで、20世紀初頭の問題ラマのことを紹介したが、その時のラマに懲りたのだろうか、問題ラマが崩御した後、お寺の関係者たちは転生ラマの選定に最大限の注意を払ったようだ。おかげで現在のラマは、寺院経営に優れた才を発揮なされている。
(現在のティクセ寺管長)
15世紀、(ティクセ寺の属する)チベット仏教ゲルク派の開祖ツォンカパの下に、ラダック出身の弟子チャンセム・シェラブ・サンボがいた。
(チャンセム・シェラブ・サンボ)
ツォンカパは、チャンセムに対して、「インダス川の右岸で、私の教えが栄えるであろう」と予言の言葉を与えた。その後、故郷に戻ったチャンセムは、ティクセ手前の奥にあるスタクナ村に小さなお堂を建立した。
(スタクナ村にある最初のお堂)
後に、チャンセムの甥で弟子でもあるパルデン・シェラブ・サンボが、現在の地にティクセ寺を建立した。
(パルデン・シェラブ・サンボ)
現在のティクセ寺管長は、チャンセム・シェラブ・サンボの9代目の生まれ変わりであるという。若い頃、チベットのデプン寺で教育を受けたそうだ。
ティクセ寺には、109人(一人多いような?)の僧侶が在籍しており、ほかに40数名の学僧が、小中学校程度の義務教育を受けながら僧院付属の学校に就学している。
(学僧の授業風景)
また、南インドにあるゲルク派僧院、デプン、セラ、タシルンポの各寺では、ティクセ寺出身の数百人の僧侶が仏教哲学の研鑽につとめているという。中には、ラダックに戻らずに一生を南インドの僧院で過ごす者も少なからずいるとのことだ。
ティクセ寺は、僧侶の福利厚生が充実しているそうだ。のみならず、お寺の多角経営の面でも、チベット文化圏全体で、他のお寺に比べ群を抜いている。
ティクセ寺には、一般のお寺とは比較にならないほど、まともな経営をしているホテル、ゲストハウス、レストランがある。いずれも、僧侶が片手間で経営しているのではなく、経験を積んだプロのマネージャーやコックを雇っている。お寺の下には、つい最近オープンしたばかりのチャンパ・ホテルがある。トイレ、シャワー付の部屋は1000ルピーだ。隣には、レストランがある。
(レストランのような食堂)
丘の上、お寺のすぐ下の複合施設の一角のゲストハウスは、共同トイレではあるが、部屋は清潔だ。
同じ建物には、お土産物屋、レストラン、チベット医学診療所、博物館、が入っている。
(お寺の下のレストランとホテル)
(お土産物屋)
(お寺グッズ)
(チベット医学診療所)
(アムチ)
(博物館入り口)
診療所には、アムチ(チベット医)が常駐し、観光客の診察も可能だ。博物館は、展示内容も、展示技術もしっかりしている。
このような、立派なティクセ寺の諸活動に敬意を表して、数々の賞を(勝手に、しかも賞金抜きで)送りたい。
・ ポタラ似大賞
2位のピヤン寺のほうが、紅と白の配色でポタラに近いのだが、ティクセ寺は、本堂下に立ち並ぶ、数々の僧房が立体感をかもし出している。
・ 金の弥勒賞
デリー国際空港の壁にも写真が飾られ、ラダックのガイドブックには必ず紹介されているラダックの顔ともいえる存在。お顔立ちも立派で、著名な撮影スポットである。
・ 最優秀緻密タンカ賞
本堂の奥の間にある、護法神チャムシンのタンカ。珍しくパンチェン・ラマの手形が左右に描かれている。ただ、本堂のお坊さんに聞いてみても、どのパンチェン・ラマか分からないそうだ。チベット文化圏全体で、わたしたちが実際に目にできるタンカのうち、緻密さでは、最高の部類に入るであろう。
・ クリーン・トイレ大賞
(写真提供:東京都 勝俣様)
「白亜の殿堂、エーゲ海のような風景」と称された(私が称している)、チベット文化圏全体でもっとも清潔(今はまだ)で優美なトイレ。その深さでは、ポタラのトイレに劣るが、見る者、する者をエキゾチックな気分に誘うであろう。
・ さくら○もこ賞
ティクセ寺には、数々のマンガチックなゆるキャラが存在している。
よくある六道輪廻図だがよく見ると…
楽しげな人間界 なぜ万歳しているのか |
いかにも寒そうな地獄 | 同じ地獄でもあまり寒そうでない |
餓鬼に槍が刺さっています | 頭から脳みそがこぼれていますよ | 阿修羅と戦う天界の神様たち 後ろの神様笛吹いてるし・・前の神様太鼓たたいてるし・・ |
楽しげな浮き彫り
屋上の主 ゆるいガイコツ