ネパール 学校教育の未来

*風のメルマガ「つむじかぜ」743号より転載

ネパールでは、今、小規模の私立学校が経営を継続できなくなっているという。その理由に驚いた。政府が借地での学校経営を禁止したというのである。
確かに私立学校の中には、金もうけだけが目的で、教育をきちんとやらない学校もあるだろう。そういう学校を排除しようという狙いだろうが、十把一絡げで乱暴極まりない。金持ちたちがやっている私立高校の生徒を増やすためだとも揶揄されるのも道理である。

先週の日曜日、八王子で開かれた「ネパールと日本の教育交流会」に呼んで頂いた。そこで、スンコシスクールの校長をされていたスダルシャン・プラダン氏から上記のようなお話を伺った。実は、このスンコシスクールもそれで廃校に追い込まれている。

スダルシャン氏は、ネパールのストリート・チルドレンへの支援を続けてきたCWIN(child workers In Nepal Concerned Centre)の活動もされていて、ストリート・チルドレンや恵まれない子供たちをスンコシスクールに受け入れてきた。それを八王子の「ネパールと日本の教育交流会」が支援してきたのである。

ネパールでは、学校の数も、教育の質も私立学校の方が、公立学校を遥かに凌いでいる。実は、私立学校が教育の主たる部分を担っているのである。但し、「教育の質」といっても、「英語教育」のことを指している場合が多い。同会の世話人で通訳もされていたAさんが、「ネパール人が英語を学ぶのは立身出世のためです」。と分かりやすく説明されていた。教育の内容も目的も、日本とは大きく違う。

「母語である第一言語が定着する前に、第二言語を学ぶことの問題点が日本では指摘されているが、ネパールでの小学校からの英語教育について問題はないのか」そんな質問が出たが、もともとネパール人は、民族の言語と共通語であるネパール語の両方を幼児期から身に着けていく。生まれながらにしてバイリンガルという日本人とは全く違う環境にある。そのことより、英語を学べれば質が高いと評価されることの方が問題であろう。

「日本では不登校が長年問題になっているが、ネパールではないのか」。そんな声も会場から出たが、ネパールでは、教育を受けたくても受けられないとい現状(ストリート・チルドレン、児童労働がまだ数多く存在する)がある。不登校は、一部の富裕層にはあるかもしれないが、一般の人々の間ではには聞いたことがないそうだ。貧しかった嘗ての日本と同じである。

スダルシャン氏は、「今の政府は、ストリート・チルドレン、児童労働の問題をCWINと一緒に考え一つの方向に向かっている。王政のころは、CWINの活動は、政府から疎まれていた。今は、やり易くなった」。今、ネパールは、少しずつ変わろうとしているのかと嬉しくなった。変わってほしい。それが私の切なる願いである。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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