「アスペルガーでなかったら、こうして立ち上がることはなかったでしょう」そう堂々と言ってのける16歳の少女グレタ・トゥーンベリさんが、世界中の注目を集めている。
昨年の8月、ストックホルムの国会議事堂の前で「気候のためのスクールストライキ」というプラカードを掲げて座り込んで注目を浴びた。「すべてが間違っています」「大絶滅を前にしているというのに、あなたたちはお金のことと、経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり」「私はあなたたちを絶対に許さない」と彼女のいい方には遠慮がない。大人たちは苦々しく思いながらも、同年代の若い世代から支持を集めている。
そんな中、COP25が15日、スペイン・マドリードで閉幕した。2020年から実行に移されるパリ協定の具体的なルールを決めるはずだったが各国の利害が対立し決まらなかった。温室効果ガス排出削減目標の引き上げも行う予定だったが、具体的な数値目標は示されることはなかった。残念ながら、グレタさんの指摘そのままになってしまった。
温室効果ガスとは、CO2,メタン,亜酸化窒素,対流圏のオゾン,フロン等だが、そのほとんどがCO2であり、温室効果ガスの削減=CO2の削減ということになる。その結果、脱炭素=脱石化燃料ということになり、中でもCO2をもっとも多く出す石炭の使用には厳しい目が注がれている。日本は、2011年の3.11以降、原発が稼働しなくなり火力発電を主力としており石炭を使っている。その上、海外にも石炭火力発電のプラントを輸出しているから、今回、厳しい指摘を受けた。
環境問題は、時に少々教条的な主張が行われ、日常生活のすべてが間違っているといった主張がされることがある。確かに大量消費を前提とした生活は、環境破壊の元凶である。すでに大量に海洋に浮遊するマイクロプラスチックは、生活中で棄てられたプラスチック製品が主な原因となっており、生活そのものの変更を余儀なくされていることは確かだ。
しかし、感情論や精神主義では環境問題は解決しない。やはり、環境を守るテクノロジーの発展に期待したい。例えばカナダのカーボン・エンジニアリング社が行っている空気中の二酸化炭素を低コストで吸収する新技術が注目されている。吸収したCO2を最終的には液体燃料に利用する。CO2は大気中に戻されるが繰り返し使える。
人口光合成の技術開発も進んでいる。この技術は、直接CO2を吸収消費するだけでなく、有機物も合成できるので、石化燃料からではない化学原料を人工的に作り出すことができる「夢の技術」と言われている。
電気自動車も、風力や太陽光発電などに大幅に切り替わるなら大きな進歩である。いずれにしても、温暖化防止・環境保全は、若い世代がずっと背負っていく問題である。グレタさんの主張に若い世代こそ耳を傾けてほしいと願う。