秋頃、ギグワークという働き方があることを初めて知った。私は学生に「働くとは経験を積んで力をつけていくことだ。時間の切り売りはするな」といってきた。まったく逆である。空いた時間を切り売りして、賢く稼ごうということらしい。
本業&ギグワークという人も増えているそうだ。ギグワークだけで月収10万円以上になる人もいるそうだから、いくら働き方改革をしても、日本人の労働時間は減らないかもしれない。そういえば、時間外労働の数え方は、副業と本業を通算するようになるそうだが、雇用契約もないギグワークでは通算のしようもない。
フリーランス契約は、比較的まとまった案件の成就を約するが、ギグワークは空いた時間で単発の仕事をするのだそうだ。典型例がUber。空いた時間に自分の車でタクシー代わりをする。とにかく、インターネットに登録しておけば、そうした短時間、短期間の仕事が仲介される。「あ、時間が空いた、コンビニでバイトしよ!」というあの
CM、あれがギグワークだと思う。元々はジャズなどで、知らないミュージシャンたちが、その場限りのライブをやることをgigというそうだ。
しかし、こんな働き方は、ていよく安く使われるだけだと私は思うのだが、主婦や親を介護するために仕事を止めてしまった人ような、長い時間は働けない事情のあるたちには、好都合な歓迎すべき働き方になっているようだ。今に、賃金の不払いや、条件の一方的な変更や怪我をした時の補償問題など、問題が次々と出てくるに違いない。法律は、いつも現実の後追いである。問題が出てきて初めて規制法ができる。
嘗て、就職氷河期で派遣労働へと追いやられたロストジェネレーションの人たちが、今、引きこもりや親の年金で生活している等といった状態に陥り、社会問題となっている。もし、ギグワーカー(ギグワークを本業にする人)が相当数になれば、これまた何年後かには、社会問題化することは間違いなかろう。すでに欧米では、ギグワーカーが多数いるらしい。
インターネットは、様々な需要をマッチングさせる。従来は、職安へいくか求人広告を見るくらいしか働く場所を探すことはできなかったのに、随時、即座に働く場所を見つけることができるということらしい。従って、何もかもが、ばら売り、切り売りである。こんなことで、いいのだろうか。
あれこれ私が心配しても仕方がない。年末も押し迫ってきた。2020年が良い年となることを祈って本年最後の稿とします。皆さん、良いお年をお迎えください。