市田柿

私の生家は、菓子屋なのに野菜を自給できるくらいの畑を持っていた。祖父の畑仕事の手伝いも結構やらされた。夏は、今日食べるキュウリやナスを、びくを腰に巻いて歩いて五分くらいの畑まで行って取ってくる。キュウリの形も太さもバラバラだが、意外と太いキュウリが美味しい。真ん中の種をスプーンで取って塩を振って食べれば最高だ。

その畑には梅の木が4本ほどあって、家族総出で梅を取り、梅干しも作っていたし、沢庵、野沢菜漬もすべて自家製だった。そもそも、生業の菓子屋の仕事は、そんなに忙しくなかったのかもしれない。

干し柿もその一つで、秋には柿の皮むきをやらさられた。子供には包丁の代わりに柿専用の皮むき器があてがわれ、右手で先端に柿が刺さったハンドルを回し左手でピーラーを回る柿に当てて剥く。剥いた柿は、ヘタに1㎝ほど残した細枝をタコ糸で繋いで軒に干す。軒下に並んだ幾筋ものオレンジ色の吊るし柿の柿暖簾は、黄金色の稲穂と相まってとても美しく、秋の写生会には好んで描かれた。

秋になると、当たり前のように炬燵の上に柿が並んだが、それは甘柿。干し柿には渋柿を使う。今でも、親戚の家で干し柿を作っているので毎年送ってくれるが、干し柿は、加工品が故に品質管理が難しく、カビの発生、異物の混入など事故も多いそうだ。そこで、風の縁shopでは、「はと錦」をやっている兄に紹介してもらい、JAみなみ信州にお願いすることにした。

今は、市田柿を名乗るための条件も厳しく決まっていてすっかりブランド化しており、厳しい品質管理をしていると農協の担当者は丁寧に説明してくれた。東京に来て干し柿の価値の高さに驚いた。いやというほど食べてきた、あの干し柿が結構な高級品である。そんな思いで、是非、皆さんにもご賞味いただきたいとおもい風の縁shopに加えることにした。

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