飛島は鳥海山の麓から西方へ30キロ離れた島である。約1000万年前に生まれた周囲10キロの小島だが、縄文から江戸時代まで人々の息遣いが刻み込まれている。今から凡そ百年前の大正14年8月、一人の民俗学者がこの島を歩いて『羽後飛島図誌』を著した。彼の名は早川孝太郎(1889~1956)。奥三河の花祭の研究で名高い彼が、日本海の小島に足を運んだのは何故か。そして彼の眼に映った百年前の飛島とは。『羽後飛島図誌』を片手にして、日本列島文化の原形質を探す旅がここにはじまる。
〇キーワード:照葉樹林・ブナ林文化、日本列島誕生史、対馬海流・環日本海文化、北前船文化、五月舟、火合わせ信仰など。
〇学術的視野:民俗学、人類学、歴史学、地質学、植物学、観光学など。
張 大石 (チャン デソク)
1966年韓国光州生まれ。東北芸術工科大学文化財保存修復研究センターを経て、現在は角川文化振興財団―武蔵野ミュージアム勤務。地域文化遺産の保全・活用・資源化をテーマにした研究活動や、「武蔵野樹林」、「東京人」などの雑誌に寄稿を行っている。主な著書に『日本最古の石鳥居は語る』、『地域を創る文化遺産の可能性』など。
佐藤 賢太郎 (さとう けんたろう)
1976年、福島県生まれ。東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科修士課程修了。現在、会社員。1997年に初めて飛島を訪れ、大学の民俗研究会有志で『タブの島 飛島を訪ねて』を発行した。