コロナワクチン100万回分が廃棄されたという報道があった。しかもこれは東京23区における今年4月~9月の半年間の数に過ぎない。金額推定はおよそ27億円。全国ならとんでもない金額になりそうだが、それを調査する予定はないという。ワクチンを短期間で1億人近い国民に何回も接種させようという国家の意図が優先されたのだから、無駄が出るのも仕方ない。そういう理屈も分からなくはないが違和感は残る。
2回目までは接種率は80%を超えたが、3回目の接種は66%台に留まっている。それにも拘らず、海外旅行も全国旅行支援もワクチン接種3回が条件にされ2回以下の人はPCR検査による陰性証明書が求められる。ワクチン接種していなくても門前払いはしない。不便だが道は開けてあるという訳だが、陽性になったら暫くは日本に帰って来られないし、自主隔離はまだあるから国内旅行もできない。尾身茂会長の直近の会見では、ワクチン接種が最も大切だと強調していたが、ワクチン接種を3回していても無症状の感染者となることは多々あり、町中に無症状の感染者が溢れている。ワクチン接種2回以下と3回以上を分ける根拠が何処にあるのだろうか。
また、ワクチン接種をしていれば重症化しないという言われ方をするが、それとて科学的に立証されているのだろうか。オミクロン株に移行してからは、確実に弱毒化しているのではなかろうか。そこで、以下の厚生労働省が出している数字を見て頂きたい。
新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの重症化率等について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000964409.pdf
オミクロン株と季節性インフルエンザでは、60歳未満では、重症化率、死亡率とも同じである。65歳以上では、オミクロン株は季節性インフルエンザの3倍、4倍と高いが、それでも重症化率は2.49%、死亡率は1.99%と極めて低い。これをワクチン接種の効果だというなら、今後も定期的にワクチン接種をすれば、インフルエンザ並みの病気として2類相当から5類に変更し、どの医療機関でも診察が可能となれば、医療崩壊などしなくなる。
しかし、尾身茂会長は、「2類といわれるがコロナへの対応はむしろ5類に近い。タミフルのような薬が出てくれば一変する」という趣旨の発言をしている。確かに隔離も全数報告もしなくなったから2類相当とは言えないが、問題は、発熱外来への限定的な医療アクセスしかできなくしていることである。
そうこうしているうちに、第8波が始まったようだ。政府から出てきた対策は、11日に示した「対策強化宣言」と、新たに病床使用率ごとの4つのレベル分けを新設しただけだ。各都道府県知事は、レベル3(病床使用率50%超)で「対策強化宣言」を発し、混雑した場所への外出や大人数での会食、大規模イベントへの参加などを見合わせるよう要請ができる。レベル4(病床使用率80%超)で、「医療非常事態宣言」に踏み切り、外出や移動は不可欠なもののみ、イベントは延期といった強い要請が可能になる。但し、法的強制力はなく、飲食店の時短・休業や学校の休校は求めない。これでは、第7波の時と基本的には何も変わっていない。しかも、すべて都道府県知事に丸投げしたような内容である。
政府は自粛を求めることをしないし、経済活動は止めずインバウンド客を増やすといっている一方で、知事の権限で自粛を求められるようにした。どうしてこんな矛盾したことがまかり通るのか。しかも、法的根拠がないからあくまでお願いであり、金銭的補償はない。漸く見えてきたコロナの出口を塞ぐことだけはしないでいただきたい。それが切なる願いである。