スラウェシ島の巨石文化
■スラウェシ島
インドネシア中部に位置するスラウェシ島は、植民地時代にはセレベス島 Celebesと呼ばれていました。タロイモの品種セレベス芋はスラウェシ島が原産です。面積は17万4600平方キロメートルで、世界で11番目に大きな島、インドネシアでは4番目に大きな島です。この海域は島が多く、東にはモルッカ諸島、西にカリマンタン島(ボルネオ)、南に広がるフローレス海を挟んで小スンダ列島(ヌサ・トゥンガラ諸島)、北にセレベス海を挟んでミンダナオ島があります。環太平洋造山帯とアルプス・ヒマラヤ造山帯との合流地点にあたり、複雑な地形をしており、一見、アルファベットのKに似た形状をしています。最高地点は、標高3478mのラティモジョン山です。トウテイ湖やテンテナ湖などの湖があり、各地域は山や湖や森林に遮られており、古来、交流に乏しかったといいます。そのため一つの島としての連帯は弱く、また、かつては宗教間の係争もあり、1998年~2003年にはポソ地域で宗教戦争が勃発しました。現在では地域の明確な区分けのため、テンテナ湖を中心とした11の自治体をポソ県から独立させ、テンテナ県を作ろうという動きもありました。一方で観光地としても人気でタナ・トラジャ地方はその独特の建築様式や墓制そして他では見ることができない豪華絢爛な葬式のある民俗の宝庫として、北部のマナドの周辺はダイビングやシュノーケリングのメッカとして、中央部のロレ・リンドゥー国立公園にあるタンビング湖周辺には270種の鳥類が生息し、その3割が固有種となっています。
■ポソ県
スラウェシ島南部に位置する自治体で、前述のロレ・リンドゥー国立公園は自然豊かな国立公園として人気上昇中ですが、文化的にも面白いみどころがたくさんあります。ロレ・リンドゥー国立公園とテンテナ湖とに挟まれたベソア谷、ナプ谷、バダ谷といった谷あいの村には、ふしぎな石造物が数多く残されています。
★ベソア谷 Lembah Besoa
◎は訪れる予定の場所
△は時間が許せば訪れる予定の場所
xは基本的に訪れないが運が良ければ見られる可能性がある場所
【◎タドゥラコ巨石文化保護区 Cagar Budaya Megalitik Tadulako】
頭部や頸部や胸部に装飾が施された大きな石人像『タドゥラコ』や石棺『カランバ』があります。
【◎マソラ Masora】
少し太めの水牛と思しき石像。顔の彫りが浅く、皺が刻まれています。一説にはサルの像ではないか、とも言われている横たわる像です。
【◎ポケケア巨石文化保護区 Cagar Budaya Megalitik Pokekea】
石造物の野外博物館。石棺群として『円筒型の石棺』『横たわる石棺』『蓋石が載る石棺』、石棺の蓋石群として『シンプルな石蓋群』や『顔が彫られた蓋石』、石人像として『装飾のある石像』等があります。そのうちいくつかを訪れて見学します。27基の『円筒形の石棺』はカランバ Kalambaと呼ばれ、共同埋葬施設=合葬墓の役割を果たしていました。ラオスのジャール平原の石壺を彷彿とさせます。カランバには蓋が被せられていましたが、その蓋の外壁には短冊状の顔や、サルやトカゲの彫刻が施されたものもあります。王侯貴族とその家族を合葬した墓と考えられています。二つのカランバの製造時期を調査したところ、ひとつは西暦766~898年、ひとつは1146~1272年との結果が出ました。
【△レンペ巨石(見学可能であれば寄る予定です)Megalitik Lempe】
妊婦の石像と、石の壺があります。閉鎖されたとの情報もあります。
【✕トゥンドゥワヌワの石柱 Menhir Reruntuhan Tunduwanua】
ハンギラ Hanggira村トゥンドゥワヌワの丘に建つ1.5m~2.1mの石柱群。道は悪路です。
【△ベソア谷の農村】
素朴な農村風景がご覧頂けます。こじんまりとした集落もみどころのひとつ。お泊りの宿はロスメン(インドネシア式の簡易旅館)です。
★ナプ谷 Lembah Napu
◎は訪れる予定の場所
△は時間が許せば訪れる予定の場所
xは基本的に訪れないが運が良ければ見られる可能性がある場所
【◎ワトゥノンコの巨大石造物 Patung Megalitik Watunongko】
野原にポツンと置き忘れられたかのような、石蓋がずり落ちた石槽です。カランバの一種です。
【◎ワトゥタウの石人 Megalitik Watutau】
ワトゥタウの集落にある民家の中庭にある石人像。頭が大きくほぼ二頭身。丸い大きな目を眉と鼻筋が特徴的です。
【△ペカセラ Pekasela】
スマートで小顔が特徴な石人で、林の中に佇んでいます。肩、首、顔がかなり上部に偏っているので、胴長に見える珍しい形状です。
【△ペカタリンガ Pekatalinga】
こちらは卵型の大きな顔を持つ石人で、同じように林の中に佇んでいます。肩や顎の形状がはっきりしている珍しい形状です。
【✕他の石造物群】
丸顔で二頭身の石像『ワトゥモリンド』/陰茎を両手で抱える石像『ペカブク』/ワンガ Wanga にある『小石像群』/石棺『ウィヌア』/ワトゥルム Watulumu の装飾のある硯型の石棺/オボカ Obokaの環状列石など、ナプ谷には様々な様式の石造物が放置されています。
★バダ谷 Lembah Bada
◎は訪れる予定の場所
△は時間が許せば訪れる予定の場所
xは基本的に訪れないが運が良ければ見られる可能性がある場所
【△ランケ・ブラワ LANGKE BULAWA】
額の部分が長めなのが特徴的な石人像
【△マチュール MATURU】
丸木舟を彷彿とさせる横たわる石人像
【△メッシガ MESSIGA】
帽子または冠をかぶっているようにも見える石造物
【△カランバ KALAMBA】
保存状態のよい茶碗のような形の石棺が残る遺跡群
【△ティノエ TINOE】
うつむき加減で吊りあがった目が印象的な女性の石像
【△タライ・ロイ TARAI ROI】
二頭身の地蔵や羅漢像を彷彿とさせる石人像
【△アリ・インポヒ ARI IMPOHI】
祭祀場のような場所に建つ奇妙な形の石像
【△ベワ BEWA】
ランドアバウト(Circle Junction)に立つユーモラスな石像
【◎ロガ LOGA】
別名が”癒し”という石人像で、楕円形の穏やかな顔をしています。やや右方向に傾いて立っています。全体的に彫りがやや浅いのが特徴です。
【◎オバ OBA】
HOMBOAのユーモラスな形の石造物。ずんぐりむっくりしており、やや上方向を見ているイメージ。顔は丸く目鼻立ちがくっきりしている。
【◎バウラ BAULA】
BADAN KAJAの田圃の畦に横たわっている水牛の石造物。ベソア谷にあるマソラに似ているが、こちらは地元では完全に水牛と思われています。
【◎パリンド PALINDO】
パリンドは中央スラウェシの石造物の中で最も有名です。別名は“エンターテイナー”で、高さ4.5mで目鼻立ちがはっきりしています。
【✕他の石造物群】
小顔の像『メパダリ』/顔の輪郭が体に刻まれている『ウエアタ』/彫りの浅い顔の『シガ』/もともとの形状が判然としない『トハカとオパス』/顔の部分が大きい『トルンパナ』/『甕棺』/『石柱群』/『石臼』/『石槽』/BULILIの顔のない石像『OBOKA』/寄り添うように立つ2体の石像の『BIDU』/横たわる石像『トパトゥル(TOPATURU)』/『内部に仕切を持つ石桶』/『蓋石』/横たわる『ポンコーノ』なる石像などが点在し、石造物の宝庫となっています。
■タナ・トラジャ地方
タナ・トラジャ地方の見どころは、伝統的な舟形住居(トンコナン・ハウス)、自然の地形を利用した墓、崖に佇むふしぎな葬礼人形タウタウ、農村風景等です。地名の由来は『トラジャ人の土地』で、標高1000m前後の高原に農村が広がっています。コーヒー栽培も盛んです。『トンコナン・ハウス』と呼ばれる舟形の住居(ケテ・ケス)や、自然の洞窟を利用した墓(ロンダ)、崖に穿った横穴墓(レモ)、母乳のような樹液の出る木の幹に穿った乳児の墓(サラプン)、巨大な巨石の柱が建ち並ぶ儀式の場所(ボリ)、石の葬式人形が残る民家(パンリ)そして農村風景そのものの景観。時期があえば豪華絢爛な葬式を拝観できることも。