楽しみながら考える対馬の環境問題
今回、対馬ツアーのメインに据えたのは「馬」「海」「山」。日本在来馬である対州馬(たいしゅうば/たいしゅううま)のレースを観戦し、美しきリアス海岸を船と浜辺から見学。古代山城・金田城(かなたのき/かねだじょう)では、往復2-3時間ほどのハイキングも楽しみます。
アウトドアのフィールドとして大変魅力的な対馬ですが、一方でその自然環境や育まれた文化は消滅の危機を迎えています。島民と協力しあって生きてきた対州馬はモータリゼーションと共に忘れ去られつつあり、近年、対馬近海の漁場は海藻類が急激に消失する「磯焼け」という現象に悩まされています。また、島内の90%を占める山地では有害鳥獣対策と希少動植物保護が喫緊の課題として挙げられます。
それぞれの問題に対し、どうやって解決への道筋を立てるのか。対州馬の保存・活用を担う獣医の吉原さん、港でサバやマグロの養殖を営む地元漁師の犬束さん、環境教育が専門であるインタープリターの藤川さんから、詳しい話を伺いつつ考えてみたいと思います。きっと、思ったより未来に希望が持てるはずですよ。
対州馬って?
日本在来馬は古墳時代にモンゴルから持ち込まれた軍馬をルーツにしており、中でも大陸との中継地である対馬は日本で最も早く馬が伝来した地だったと考えられます。体格が小さくおとなしい対州馬は駄馬や馬耕用として人々の生活を支え、山地が多い対馬には欠かせない存在として各家庭で飼育されてきました。現在では50頭ほどまでに個体数を減らしていますが、全ての馬を対馬市役所(または貸与された団体)が管理し、新たな時代の馬と人との関わり方を模索しています。
現地ガイド・インタープリター
藤川 あも (ふじかわ あも)
長崎県対馬市在住。「一般社団法人 対馬里山繋営塾」所属。大学では環境教育を専攻し、インタープリテーションの技術について学ぶ。
ツシマヤマネコがきっかけで対馬に興味を持ち、2019年に対馬へ移住。現地ガイドとして、対馬の自然から歴史まで幅広くその魅力を伝えるべく奔走中!
獣医、乗馬インストラクター
吉原 知子 (よしはら ともこ)
都心の動物病院で勤務した後、馬好きに歯止めがかからず対馬へ移住。現在は市役所で対州馬の保存・活用のための取り組みを行っており、遺伝子調査の論文で学会の最優秀賞を受賞。
地域のイベントや小中学校の授業での「ふれあい体験」、子どもたち向けの乗馬教室、仙台市にある乗馬倶楽部とのオンライン地域間交流など、対州馬を通して島の魅力を内外に発信し続けている。対州馬のいる宿を作って馬で往診に行く。そんな暮らしが夢。
「語る漁業」「見せる漁業」に挑戦
丸徳水産 (まるとくすいさん)
私たち丸徳水産は、私たちの宝物であるこの海を後世にも残したい。その思いから、海を守る活動の一つとして、海と直接触れ合い、海を知ってもらう体験ツアー「海遊記」を実施しています。
漁業者が普段使っている漁船に乗り、養殖場を見てもらったり、魚釣りを体験したり、磯焼けの状況を見てもらったり、地元漁師が直接アテンドし、海について楽しくご紹介致します。