先日、消防庁が監修する「上級救命講習」を墨田区本所の防災館で受講してきた。
弊社では、添乗時に野外で活動することが多く、救命法はもちろん、止血法や包帯法、固定などの応急手当の心得が求められるため、スタッフ全員が消防庁や日本赤十字の講習を受け、認定証を取得するようにしている。前回は2017年に実施したのだがコロナの間に認定証の有効期限が過ぎてしまったので、昨年から再講習をするようにしている。風の旅行社に入社してからの25年ほどで、日赤と消防庁の講習を合わせて4,5回は講習を受けている。
数年前から消防庁の救命講習は心肺蘇生とAEDの使い方がメインとなり、ファーストエイドの割合が下がっているのが非常に残念だ。というのも、我々が添乗にでるフィールドはほとんどがAEDも近くになく、救急車が到着するまで数時間はかかる、そもそも救急車が来られないような場所が少なくない。そのためAEDの使い方を習っても残念ながらあまり役に立たないのだ。もう少しファーストエイドに力を入れて欲しいのだが、現場の救急救命士の皆さんとしては一般の方に「救急車が着くまでの対応」を期待しているので、このようなカリキュラムになっているのだろう。
今回、気づいたのは「感染症予防に配慮する必要がある」ということで、倒れている人を発見した際に、周囲の人に「窓を開けて換気してください」とお願いしたり、心肺蘇生を行う際に顔にハンカチなどをかけたり、人工呼吸は吹込みを行わず吹く真似をするだけだったりと、コロナが蔓延していたころを思い出させるもので、講習を担当する方の苦労がにじみ出るものになっていた。一方で動画を多用していて、教本の内容をyoutubeで復習できるようになっているなど、講習の進化も見られた。
講習の合間に、先日スタッフが社内で倒れ、そのまま亡くなってしまった件について、我々が何かできたことがあったのかを教官に尋ねてみた。基本的には「おかしいと思ったらすぐに救急車を呼んで」ということが重要だとのことだが、判断の基準として「BE FAST」という標語を教わった。
B=Balance(バランスが取れなくなる、歩行困難)
E=Eye(視野が欠ける、片目が見えなくなる)
F=Face(顔の片側が下がる)
A=Arm(片腕が上がらない)
S=Speech(ろれつが回らない)
T=Time(すぐに119番に電話する)
の頭文字で、以前は「FAST」の4つだけだったそうだが、B(バランス)とE(眼)が新たに加わったそうだ。特に急にバランスが取れなくなった場合は、かなり深刻な場合があるので甘く見ないほうが良いのだそうだ。そういえばあの時も「急に歩けなくなった」と言っていた…。
東京でも桜も咲き始め、多くのお客様が旅に出て添乗の仕事も増える夏が近づいている。当然ながら、誰も怪我も病気もしないのがベストなのだが「いざ」という場合に備えなければならない。皆さんの旅の安全のためにも、今回の講習をyoutubeで復習しようと思う。