第217回 ドムティ ~熊胆~
熊の胆 現役の猟師であること、つまりいまも生死をかけた現場にいることがAさんの佇まいから伝わってきた。お歳をうかがうのを忘れてしまったがたぶん75歳くらいではなかろうか。 信州の山深い里にAさんの御自宅はある。20歳 […]
熊の胆 現役の猟師であること、つまりいまも生死をかけた現場にいることがAさんの佇まいから伝わってきた。お歳をうかがうのを忘れてしまったがたぶん75歳くらいではなかろうか。 信州の山深い里にAさんの御自宅はある。20歳 […]
冬 「死ぬかと思った」。 あれは1994年、信州・野辺山の高原野菜農場でアルバイトをしていたときのことだった。「小川君、マルチの端っこを持ってて」と親方の命じられるままにマルチ(畑を覆う黒いビニール)をつかみ、地面に当て […]
コウジバナ 葉っぱの上に咲く小さな花を見つけた。「それはね、ここではママコグサって呼んでいるの。むかしは継子が憎くて、手の上にお灸をすえたからよ」と古老が教えてくれた。継子、つまり血のつながっていない子どものことである […]
学生を指導するダワ博士 当初、チベット人のお宅で、いつも白湯(チベット語でチュ・ツァボ)がでてくることに戸惑った。日本人にとって白湯は薬を飲むとき以外、客人に出すのはあり得ない。水を出すとすれば氷水だからだ。そしてメン […]
ラダック・ティンモスカン 「狼が人間を襲って食べたという確かな記録はない」という記述を見つけてページをめくる手が止まった(注1)。すぐさま15年前の記憶が甦る。 2001年8月、メンツィカン入学前の僕はインド北部の秘境 […]
よろける妻 富山の田園地帯の米農家に生まれ育ったからといって米の味にうるさいかといったら、まったく逆である。なにしろ家の納屋には古米(昨年の米)ならまだしも古古米(一昨年の米)が常に備蓄してあって、当然、古い米から順に […]
岩塩 そういえば小さい頃、塩といえば無粋な油紙袋に入った真っ白な食塩しかなかった。いつのころからか、赤みがかった自然塩が流通しだしたような気がしているが明確な転換点を僕は覚えていない。たぶん僕が田舎暮らしに興味を持ち始め […]
マニ車の列 むかし、むかし、チベット王のお母様が重い病気にかかってしまいました。ヒマラヤの薬草を用いても一向によくなりません。ある日、王様は夢を見ました。 「遠く東の国、太陽(チベット語でニ)のやってくる(オン)国、ニオ […]
別所温泉駅 別所温泉(以下、別所)に引っ越してきたときインドのダラムサラと雰囲気が似ているなあと感じた。妻も同じ印象を抱いたようだ。どちらもいろんな人々が訪れる観光地である点だけでなく、街の規模や人口、道の幅、坂道の傾 […]
くすり塾 ●半薬半哲 もう3年も前になるが都内で「薬草哲学カフェ」を開催した。しかも本物の哲学者とのガチンコ対談である。先生のテーマはデカルト。僕のテーマは「薬のごちそうさま」。デカルトと薬草。うーん、話が噛み合う保証 […]
昨年(2015年)の秋、15年ぶりにキノコ狩りに出かけた。秋の長雨のおかげでコムソウが大豊作。ところが久しぶりで目が慣れないせいか最初はなかなか見つけられない。落ち着け……、ヒマラヤでの薬草採取を思い出すんだ、と自分に言 […]
ラダックの農村 25歳のとき(1995年)長野県の黒姫山に山ブドウがたくさん実った。僕は仕事の合間にそれこそ山のように採取するとワインを作ってみようと思い立った。まず広口の瓶を買い、素手の拳で山ブドウをつぶしてから瓶を紙 […]