「ブータンの料理は世界一辛い」 そんな話を聞いたことがある方もいるかもしれません。それはYESでもあり、NOでもあります。今回はまだまだあまり知られていないブータンの料理についてちょっとご紹介します。
ブータンを代表する料理と言えば、なんと言っても「エマ・ダツィ」。ブータン人のソウルフードです。名前の通り唐辛子(エマ)をチーズ(ダツィ)で煮込んだ料理です。写真を見てお気づきだと思いますが、固形の食材はほとんど唐辛子だけ。「ほうれん草の白和え」で例えると、ほうれん草が唐辛子で豆腐がチーズに当たりますね。そう、ブータンでは唐辛子は香辛料や薬味ではなく「野菜」なのです。これだけ唐辛子を使っていますから、もちろん激辛。世界一辛い料理と言われるのも分かりますね。
エマ・ダツィの他にも唐辛子と卵の炒め煮、エマと山菜の炒め、ジャガイモのチーズ唐辛子炒め煮など、さまさまな唐辛子料理があります。ブータンの人は激辛の唐辛子料理が大好きで、毎食の様に食べています。一般の家庭ではおかずは唐辛子料理1品だけのことも多く、これで主食のご飯を大量に食べます。ちなみに、ご飯は日本の様にしっとりしたものではなく、ボソボソしています。伝統的には赤米が食べられていますが、白米もあります。
毎日のおかずとなる唐辛子はブータンの人にとって必要不可欠な物。いつも身近にあり、農家では屋根の上に唐辛子を干したり、街でも軒先につるして干したり。唐辛子の畑もあちこちで見かけます。そしてその種類もたくさん。サブジバザール(野菜市場)では赤、緑、大きいもの、小さいもの、生の物、干してある物などたくさんの唐辛子が売られています。種類によって辛さが異なり、料理や一緒に入れる食材によって使い分けるそうです。(唐辛子の収穫時期はだいたい6月から8月、天日干しの時期は10月から11月中旬になります。)
それにしても、ブータンの人はなぜこんなに唐辛子を食べるのでしょうか。弊社が誇る日本語ガイド、シンゲ・ナムゲルに聞いた話では「恐らく、農作業で体力を使うので、ご飯をたくさん食べる必要があったのでしょう。辛いものは食欲をそそりますから」 と。なるほど。確かに、私もエマ・ダツィがあると、ご飯がどんどん進んでしまい、いつもご飯をお代わりしてしまいます。
「じゃあ、ブータンに行くと、激辛料理ばかり出てくるのか」と思われた方もいるかもしれません。でも、ご安心ください。観光客が訪れるレストランでは、観光客向けに調理されていて、唐辛子はほとんど使っておらず、辛くて食べられないということはまずありません。また、基本的に主食はご飯で、野菜もふんだんに使われ、肉は少なめなので、日本人にはとても食べやすい食事になっています。きっと肉が大好きな欧米人には逆に物足りないでしょう。
特に野菜ですが、日本でも良く見かける野菜がたくさん使われています。タマネギ、ジャガイモ、ダイコン、ニンジン、トマト、キャベツ、ナス、ゴーヤ、インゲン、カリフラワー、ブロッコリーなど。それもそのはず、実は、ブータンにある野菜の多くは西岡京治さんという日本人がブータンに種を持ち込み、栽培方法を指導したのです。西岡さんは1964年にブータンに渡り、28年もの間農業を指導され、生産性を飛躍的に上げることに成功しました。当時の国王はその功績を讃え、西岡さんにブータンにおける民間人の最高位「ダショー」の称号を贈りました。西岡さんのことはほとんどのブータン人が知っているのだとか。ちょっと誇らしいですね。
さて、ここで、ツアーで実際に食べる料理を具体的にご紹介しましょう。
レストランにて
観光客が訪れるレストランでは好きなものを選んで食べられるバイキング形式が多いです。料理の種類はだいたい6~8種類くらい。メニューは主食のライス(赤米もしくは白米)、野菜を輪切りにしたサラダ(大根、きゅうり、人参など)、野菜炒め2~3種類、豚・鶏・牛などの煮込み料理1品というのが基本です。レストランにもよりますが、これにプラスして、スープ、春巻き、野菜のフライ、モモ(チベット風餃子)、チョーメン(チベット風焼ソバ)、パスタなどうち1~2品が追加されるのが一般的です。味付けにはウスターソース、クリームソース、トマトソースなどが使われ、最近では醤油で味付けされた炒め物が出てくることも。いずれも日本の方にはとても食べやすいお料理です。時には、エマ・ダツィが出てくることもあります。辛いものがお好きな人はちょっと挑戦してみては? でも、とっても辛いので、気を付けてください!
民家にて
風のブータンツアーでは伝統的な民家を訪れて食事をしたり、ホームステイをするというプログラムがあります。ここでのお楽しみの1つはお母さん手作りの家庭料理です。
<朝食>
ご飯に卵焼きとエゼ、というとてもシンプルな朝食。エゼは唐辛子とチーズ、ミニトマト、パクチー、タマネギなどを細かく刻んで混ぜたもの。ふりかけ、もしくは薬味の様な物です。もちろん辛いですが、香草やトマトの酸味が効いて病み付きになる味。私はこのエゼが大好きで、実はブータンに来るたびに楽しみにしています。これは本当にご飯が進みますよ。
<夕食>
メニューは、ジャガイモのクリーム煮、大根と牛肉の煮物、豚の脂身の炒め煮、野菜炒め、ジャガイモのチーズ煮、きゅうりの輪切り、ゆで卵、など。もちろん、辛ーいエマ・ダツィもあります。ちなみに、これだけたくさんの種類があるのはお客用で、家族だけで食事をする時はこんなに品数はありません。いずれも味付けは塩やチーズなど、シンプルであっさりしていますが、素材の味が活きています。
その国を知るには、その国の食文化を体験してみるのが近道。辛ーいエマ・ダツィやエゼも、最初は恐る恐る食べていたのが、帰国前には癖になって「コレがないと物足りない!」となるかもしれません!? みなさんも是非ブータン料理を体験しにいらしてください。
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