バードウォッチングツアー視察レポート:渡り途中の珍セキレイを探す in福岡
2018年9月20日(木)~22日(土)
文●ツアーガイド:簗川 堅治(やながわ けんじ)
初秋の福岡市近郊の海沿い地域では、様々な渡り鳥が通過していきます。稲穂もすっかり黄金色、曼珠沙華の別名を持つヒガンバナが所々に咲いていて綺麗です。
今回の狙いは渡り途中に通過していく珍セキレイ類。願わくば、セジロタヒバリやムネアカタヒバリに、そしてツメナガセキレイなどに出会いたいものです。
福岡で珍セキレイを探す 1日目
まずは福岡市の西側の田んぼを回りました。草刈のしてある畦を1本1本、丁寧に見て回ります。根気のいる観察です。
目立つのはシラサギ類。ダイサギ、チュウサギ、コサギ、そしてアマサギがいたるところに降りて、バッタやカエルなどを捕っては食べています。畦に多いのはヒバリ。次いでジシギ類で、確認できたジシギはタシギのみでした。
休耕田にはほどよく水が張っていて、タカブシギ、アカアシシギ、アオアシシギ、コガモなどがいました。
シギを観察していると、急に一斉に飛び立ち、ふと上空を見るとハヤブサが狩りに来ていました。納得。近年、福岡で増えているというカササギの姿も見ることもできました。
しかし、なかなか珍セキレイ類には出会えません。悪い流れを断ち切るために、一旦、有名な探鳥地、今津湾に向かいました。
この切り替えがよかったのか、改めて田んぼを回ったら、ようやくムネアカタヒバリ1羽を発見! 日本では北海道でしか繁殖しないシマセンニュウも見ることができました。また、ミサゴが魚を狙い、クロツラヘラサギは首を大きく左右に振って採餌していました。ソリハシシギやオオソリハシシギの姿もありました。
福岡で珍セキレイを探す 2日目
午前中は福岡市の北東方面の田んぼを回りました。こちらはほとんど稲刈りが終わっていて、探すのも一段と一苦労です。コシアカツバメが複数飛んでいて、その奥からはカササギの声もしました。稲刈りが終わった田んぼにはハクセキレイ、ダイサギが多く、時折キセキレイやセグロセキレイもいました。
すると、そのセグロセキレイにやや似た地鳴きをするツメナガセキレイを発見! 2羽います。1羽は冬羽、もう1羽はまだ黄色味がある夏羽が残っていました。夏羽の方は羽衣から亜種ツメナガセキレイのようでした。警戒心が強く、残念ながら撮影はできませんでした。
さらに北東の田んぼへ移動し、珍セキレイ類を探し回りました。先ほどと同じようにコシアカツバメが飛んでいます。しかも結構な数。30羽以上のコシアカツバメが電線に止まったり、田んぼ上空を飛び回ったりしていたので、しばし観察撮影です。
ふと電線を見るとコシアカツバメの隣にいつの間にか小さなハトが止まっていました。キジバトにしてはずいぶん小さいなと双眼鏡で覗くと…なんとベニバト! 日本ではまれな旅鳥で、主に南西諸島などに現れる鳥です。こんなところでベニバトに出会うとはびっくりです。やはり、渡りの時期はどこに何が出るかわかりません!
ベニバトは移動する様子もなかったので、引き続き珍セキレイ類探しです。しかし、ムナグロの群れなどを見たに過ぎず、再び福岡市西部の田んぼ向かいました。
昨日回ったところもしつこく回りますが、ヒバリとタシギの繰り返し…。休耕田には、昨日見れなかったトウネンやヒバリシギ、コチドリなどがいました。電線のツバメの群れをチェックしたら、ショウドウツバメが1羽混じっていました。
この日の最後は、夕方に鳴きながら飛ぶ習性があるセジロタヒバリを耳を澄ませて探しました。しかし結局、ここでは見つかりませんでした。
福岡で珍セキレイを探す 3日目
この日はシギ・チドリで有名な佐賀市の大授搦(だいじゅがらみ 別名:東よか干潟)でシギチ・ウォッチングです。
潮の関係で早朝からスタートです。ここはシチメンソウの群生地としても名を馳せており、ちょうど色づき始めたシチメンソウがきれいでした。
ダイシャクシギやアオアシシギの鳴き声が聞こえてきます。ムナグロの群れが手前にいました。まだ夏羽の残る個体や幼鳥など、羽衣が様々です。ハマシギの群れにはキリアイがいくつも入っていました。広大な干潟で1羽1羽見ていきます。昨日一昨日の畔を1本1本見ていく珍セキレイ類探しのようで、根気が必要です。
たくさんのダイシャクシギの中に数羽のホウロクシギ、ダイゼンの大群の中にオグロシギやコオバシギ、エリマキシギなどがいました。アオアシシギの群れにカラフトアオアシシギも発見! なかなかお目にかかれないシギです。シギ・チドリばかりではありません。上空をショウドウツバメやツメナガセキレイがいくつか飛んでいきました。目も耳もフル回転です。
およそ3時間のシギチ・ウォッチングを終え、最後の望みをかけて、三度、福岡市西部の田んぼへ赴きました。「セジロタヒバリ、セジロタヒバリ…」と、心の中で念ずるかのようにして探しますが、残念ながらタイムリミットです。
結果、3日間で見た珍セキレイ類は、ムネアカタヒバリ1羽とツメナガセキレイ2羽のみでした。しかし、ベニバトが見れたのは大収穫ですし、たくさんのシギ・チドリ類、中でもカラフトアオアシシギに出会えたのも大きいでしょう。渡りの時期の福岡周辺は、とても楽しい場所です。
【今回確認できた鳥達】
マガモ、カルガモ、コガモ、キジバト、ベニバト、カワウ、アマサギ、アオサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、クロツラヘラサギ、バン、ムナグロ、ダイゼン、コチドリ、シロチドリ、メダイチドリ、セイタカシギ、オオジシギ、タシギ、オグロシギ、オオソリハシシギ、ダイシャクシギ、ホウロクシギ、アカアシシギ、コアオアシシギ、アオアシシギ、カラフトアオアシシギ、クサシギ、タカブシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、イソシギ、キョウジョシギ、オバシギ、コオバシギ、トウネン、ヒバリシギ、ハマシギ、キリアイ、エリマキシギ、ウミネコ、ミサゴ、トビ、カワセミ、ハヤブサ、モズ、カササギ、ハシブトガラス、ハシボソガラス、ヤマガラ、シジュウカラ、ヒバリ、ショウドウツバメ、ツバメ、コシアカツバメ、ヒヨドリ、シマセンニュウ、コヨシキリ、セッカ、ムクドリ、スズメ、ツメナガセキレイ、キセキレイ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ムネアカタヒバリ 番外ドバト 計68種