鍛造研修の様子と作品
日常、私たちのまわりで使用されている鉄の大部分は、高炉法と呼ばれる製鉄方法によって生産された鉄です。
これは皆さんもご存知のようにコークスを熱源として2000度以上の高温で銑鉄を作ります。この銑鉄は高い炭素量 と不純物の含有率が高く、それらを除去するために転炉、もしくは電気炉で二次精錬を行い、使用目的に合った鋼に変身させます。
一方、たたら製鐵は木炭を熱源として1500度以下の低い温度で鉄鉱石(マグネタイト・ヘマタイト)還元し、ケラと呼ばれる鋼をたたら炉内部に生成させます。この技術は我国古来のもので、およそ千年、もしくはそれ以上の歴史の中で育った古代人の知恵と技術の結晶でしょう。しかし、この技術は現代治金学の領域のなかでは確実に解明されているのかと言うと、実はそのメカニズムには、まだまだ解らないことがたくさん残っているようです。
たたら炉内部に生まれる鐡を、私達は現代高炉鉄と比較して、古代鉄(ケラ)と呼んでいます。この鉄は大変に清浄な鉄でその性質も極めて優れた面 を持っています。展延性、耐腐食性、鍛接性等は極めて高く、熱処理後の研磨面 の美しさは他に類を見ません。また、刀剣を造ることの出来る材料としては、これ以外には存在しません。
現在、鍛工されている材料の大部分は溶解鉄から得られた現代鋼(洋鋼)を使用していますが、これは、材料として流通 される段階で完成した性質を有しています。その性質は、鍛造の段階を経て特別 性質がよくなるものでもないようです。
一方、古式鍛造ではケラと呼ばれる和鋼をおろし金(洗い金)や、折り返し鍛練を経て材料となし、そこから初めて作品創りに移行出来る訳です。ケラは、たたら炉の内部で生まれたままの姿の時はこれでも鉄かと思う程、見た目の悪いばらつきだらけのきたならしい鉄ですが、これに個性を持たせ作品にまで鍛冶技術で完成させるとなると、それなりの手順を踏まなくてはなりません。こうしたケラとの付きあい方を私達は古式鍛造と呼んでいます。