文●嶋田 京一(東京本社)
ハワイ諸島の概要
ハワイ諸島は9つの島々と、先の太平洋戦争時に日米の海戦のターニングポイントとなったミッドウエー諸島も含めた、距離にして約2,400kmにわたって伸びる岩礁 から成り立っている島々です。メルカトル図法の世界地図では広大な太平洋の真ん中に並んでいて、その中でいわゆるハワイとして有名なのはホノルルのあるオアフ島。最近ではホノルル以外にも観光客が訪れるようになり諸島としてのハワイが認知されてきています。とはいえ一般的にはハワイといえばまだリゾート観光のイメージが強く、各島でもゆったり滞在型の豪華リゾートホテルが多く、ビーチでゆったりしたりマリンスポーツを楽しむ方が多いのではないでしょうか。
ハワイ諸島の主な島は、生成の若い順にハワイ島、マウイ島、ラナイ島、モロカイ島、オアフ島、カウアイ島、ニイハウ島と並んでいて、今のハワイ島がある地点はホットスポットと呼ばれる太平洋プレートの下のマントルからマグマが吹き上がってくる場所にあります。ここから太平洋プレートの動きにつれてずれていくことにより活動を停止した火山島がベルトコンベアーのように北西に移動し、やがてはプレートが沈み込む海溝付近で次々に海面 から下に潜り海山となっていく。それらの年月は気の遠くなるような長い歳月です。その長い歳月の流れを各島の地形を見ていくことで分かるのがハワイ諸島のユニークなところ。マウイ島、ラナイ島…などもかつては今のハワイ島のようにマグマが吹きだしていたなんて、想像するだけでもワクワクしてきます。
このような何もない海洋に突如生まれ、今まで他の大陸と陸続きになったことのない島のことを海洋島と言い、海洋島ばかりのハワイ諸島ですが古代ポリネシアの人たちがたどりつく前からなぜか島には緑があふれていたそうです。何故なのでしょう?ハワイ諸島や小笠原諸島、ガラパゴス諸島などこれら海洋島ではガイドさん達から必ずといいと言ってほどこの問題がだされます。そしてその際に、出てくるキーワードが3つのW(ダブリュー)。植物がどうやって絶海の孤島にたどりつき増えていったのか?そこに働く3つの要素それぞれの英語の頭文字がWなのです。
ここでは種明かしはしないことにします、答えはぜひハワイ諸島で確認してみてください。
生まれたての島・ハワイ島
ホットスポット上にあり今も成長を続け、マウナケア山とマウナロア山という4,000m級の山を擁し今も噴煙をあげるキラウエア火山と流れ出る溶岩が島の南東端から海に注ぎ白い蒸気煙をあげるハワイ島は地球の歴史からすればまだ生まれたばかりといえるかもしれません。ハワイ島の魅力はこの地球の生命力溢れる姿、これに尽きます。ハワイ火山国立公園のキラウエア火山の巨大な火口は、カメラのファインダーには収まらないほど。そしてなんとこの巨大なカルデラの底にはトレッキングルートがあり、歩くことが出来るのです。この巨大な火口いっぱいにマグマが溢れていた頃を想像する時、思わず身震いしてしまいます。そして、4,205mのマウナケア山の山頂では星に思いを馳せ、宇宙に浮かぶ島、地球にいるんだということを実感する。そんな体験が出来るところはここハワイ島をおいて他にはないでしょう。
一番古くそして最初の島・カウアイ島
一番若いハワイ島の誕生より遡ること約390万年前に出来たカウアイ島はハワイ諸島の主だった島の中で最も古い島です。ハワイ諸島の各島に共通 する景色に美しい渓谷があげられますが、ここカウアイ島では気の遠くなるほど長い年月の風雨による侵食がさらに渓谷を削ることで複雑になり、多雨による豊かな植物が覆うことで、緑のグランドキャニオンと呼ばれる美しい渓谷が生まれたのでした。ハワイ島が若くてまだ粗削りなのに対し、カウアイ島には円熟した美しさが感じられます。そしてただ古いのではなく、古代ポリネシア人が最初にたどりついた島と言われ、ハワイ諸島を発見したキャプテン・ジェームス・クックが最初に上陸したがカウアイ島だと言われています。美しい緑と花に溢れガーデンアイランドといわれるこの島にはかつてポリネシア人達が暮らしていた広大な渓谷の土地をそのままガーデンにしたアラートン・ガーデンをはじめとしていくつかの美しいガーデンがあり、最初にたどりついたポリネシア人が持ち込んだ植物の他、ハワイ固有種も保護されており、こうした個性の違う新旧2つの島が太平洋の真ん中の同じ地域にあるのがハワイ諸島の最大の魅力でしょう。他の島にもそれぞれの良さがあります。これからはハワイとひとくくりにせず、それぞれの島の名前で呼んでみませんか!?
※風・通信No28(2006年秋号)より転載