2009年12月30日〜2010年1月5日 文●竹嶋友(東京本社)
バガンにて2010年初日の出
「連休に、ミャンマーの魅力的な場所を訪れ、しかもスペシャルなガイドと共に、普通では行かないような村の暮らしに身を置いて村人の方々と心の通う旅がしたい!」
今回私が同行して来たのは、そんな方にはまさにピッタリの、ミャンマーの国と人々の魅力をギュッと詰め込んだ年末年始の特別ツアー。風の旅行社らしく日程表にない部分も含め思い出深く残る素晴らしい旅となりました。
それでは、ミャンマーの見どころを踏まえつつ、人々の暮らしに触れた体験も含め、報告していきたいと思います。
大地に無数のパゴダが聳える バガン
ミャンマーに入った日の翌日早朝、国内線に乗り約1時間、バガンへ到着。まずはマーケットに立ち寄り、地元の方々の生活を垣間見る事から始めます。市場には日用品から野菜や果物、仏像や雑貨まで様々な生活用品がぎっしりと敷きつめられ、お店の人と買い物をする人の声で活気に満ちています。
その後、バスを走らせ、バガンの代表的なパゴダであるシュエズィーゴンパゴダを訪れます。このパゴダには仏陀の歯が納められているとされ、バガンのみならず、ミャンマー中の人々から篤い信仰を集めています。実際に見上げてみると、煌めきながら天に向かって悠々と佇むその美しい姿は見る者を圧倒します。世界遺産に登録されていないのが不思議なくらいです。また、同じ敷地内にはナッ神と呼ばれる37体の像があります。ミャンマーの人々からは過去の偉大な人物を神仏化した現在の精霊として信仰されています。このナッ神の中には、生前仕事をすぐにサボってしまったと言われる精霊の像も納められており、みなさん特別な親近感を覚えてしまうのでした(笑)。
マーケットのおばちゃん
神秘的なバガン仏跡群
眩いシュエズィーゴォンパゴダ
パゴダの階段は予想以上に急です
アーナンダ寺院は凛とした美しさ
シュエズィーゴンパゴダと並び、バガンで代表的な寺院にアーナンダ寺院があります。この寺院は、シュエズィーゴォンパゴダのように全て黄金に覆われてはいませんがミャンマーで最も美しいと言われる均整の取れた建築美を誇ります。事実、この寺院を真似ていくつもの寺院が造られました。今回は、今まで白い塗装に塗りこめられ見ることが出来なかった建築当初の壁画も見るという幸運にも恵まれました。寺院の中に納められているのは、過去四仏を表している4体の仏像で胴体部分は全て1本の木が基礎となり作られています。近くで見ると厳しいお顔に見えますが、少し離れて見ると微笑んで見えるという話を確かめてみました(写真参照下さい)。
仏像に向かい熱心に祈りを捧げる人々に倣い、みんなで今回の旅の安全を願い、祈りを捧げました。
祈りを捧げる人々
近くでみると怒ってる?
遠くからみると・・・
レストランでは味わえない家庭料理
僧院での昼食で
おかわり4杯しました
昼食をレストランで食べるのは普通ですが、風のツアーはそれだけではありません。今回も民家や僧院におじゃまをしてミャンマー家庭料理を頂く機会がありました。タビィニュ僧院での昼食は貴重な経験となりました。昼食の前にまずは僧侶にご挨拶。僧侶の読経に合わせ私たちも姿勢を正し、手を合わせます。ミャンマーの料理は、野菜や肉類など栄養のバランスが良く、炒め物や辛くないカレーなどが一回の食事で沢山並ぶのが一般的です。主食はご飯なので、日本人の口には良く合います。フルーツも豊富です。
私たちが美味しそうに食べる姿を見て、僧侶が嬉しそうに微笑まれている顔が印象的でした。ご馳走様でした!
古のバガン王国に思いを馳せる
今回の特別ツアーのハイライトの中の一つに、パゴダから見る2009年最後の日の入・2010年初日の出鑑賞があります。
少し想像してみて下さい。母なる大河エーヤワディー(イラワジ)川に寄り添うように広がるバガンの平原に無数に建ち並ぶパゴダ。そして、千年近くその地に建つパゴダから眺める地平線に沈む夕日と昇る朝日を。千年前の古のバガン王国の人々もこの素晴らしい光景を眺めていたのでしょう。それを思うと感動も美しさもひとしおです。だんだんと太陽で赤く染まる空と、平原に散らばるパゴダの美しいシルエットが、雑念に満ちた私の頭をしばし解放してくれました。
2009年最後の日の入り
村に入り、村人の暮らしに触れる
自給自足の暮らしをしている村も訪れました。村に着くと小学校の校庭で遊ぶ子供たちが目に入りました。いやー元気の良いこと!みんなタナカを顔に塗って楽しそうに遊んでいます。タナカとは、柑橘系の木の幹をすりつぶした粉で、ミャンマーの人々は顔に塗り日焼け止めと美肌の効果を得ています。主に女性と子供が使用していますが、子供は特に厚く塗り、大人になるにつれてだんだん薄くしていくそうです。自然の知恵ですね。さて、話を戻しましょう。
私たちが、覚えたてのミャンマー語を駆使して挨拶をすると、村人の方たちは温かく迎えてくれました。70歳を超えるおばあちゃんと会話をしたときの話です。「一番の楽しみは何ですか?」と質問するとおばあちゃんは、「わたしゃ、もう生まれたときからこの村でずっと育ってきたから、村の仲間と他愛もないおしゃべりをするのが一番楽しみじゃわ」と教えてくれました(もちろんガイドのチョーミンティンさんに通訳してもらったものですが、語り口調は私のイメージです)。
家の前でタバコを
吹かすおばあちゃん
小学校の人懐っこい女の子
ゆりかごに揺られて
気持ちよさそう
道中、結婚披露宴に遭遇!
ピンクの色使いが眩しいです
バガンから国内線で約1時間、インレー湖への基点ヘーホー空港へ向かいます。通常であれば空港からバスで1時間ほど走ると、インレー湖北の湖岸にあるニャウンシュエの町へ着きますが、今回は途中で嬉しいハプニングがあり道草をしたので、少し遅れてしまいました。村の結婚披露宴に運よく出くわしたのです。披露宴は道路わきの派手に飾りつけた特設会場で行われていました。私たちも会場に入れていただき、新郎新婦と一緒にパチリ。幸せのおすそ分けをいただきました。
湖上の民の地でアドベンチャー! インレー湖
インレー湖はおもしろいです!
特に冒険心の豊かな方には強くおすすめします。
その面積は南北に20km、東西に10kmあり(雨季と乾季で大きさが変わります)、船の片足漕ぎで有名なインダー族などが暮らしています。
ここでの移動手段はボート、時には牛車にも乗ります。風光明媚な湖で、湖上の風を受けながら爽快に走るボートは乗っているだけでも楽しいところです。今回は、そのボートに乗ってインレー湖上の様々な場所を訪れました。
移動中も人々の生活が垣間見えます
湖で漁をするインダー族
いざ、インディン遺跡へ
まずは、インディン遺跡です。インレー湖の南岸にあり、ボートで岸にたどり着いてからは陸路の坂道を登っていきます。今回は牛車を使いました。頑張って牽いてくれる2頭の牛にエールを送りながら揺られることおよそ30分、インディン遺跡に到着です。この遺跡は低く細い仏塔が密集して建っているのが特徴です。バガンで見た大きなパゴダと違って、このような特徴にしたのは仏のしなやかさを仏塔の形状で表わそうとしたためだそうです。遺跡では、近くで暮らすダヌー族の美人3姉妹に出会いました。3人とも顔がそっくりだったのですぐに姉妹だと分かりましたよ。帰りも牛車でしたが、下り坂のため2頭の牛は足取りも若干軽やかな気がしました。
道に埋まった大きな石をタイヤが
通るたびスリル満点の揺れです
帰宅中のダヌー族美人三姉妹
水上マーケットは水上の交差点
すごい勢いで売り込みをかけてくる事も
インレー湖のあるシャン州では各地のマーケットは5日おきに開催されていますが、今回は幸運にも滞在中インレー湖上で開催されるとあり、行かない手はありません。マーケットが開催されるのは湖上のイワマの町です。
イワマに近づくと、船に商品を積んだ商船が道路を行きかう車のように多くなってきます。この時期ミャンマーは乾季にあたるため、湖の水量が少なく、水上よりも浮島上の方が賑やかな状態でしたが、いずれも活況を呈していました。また、ここではインディンから移住してきたという首が長~いパダウン族にも出会えました。
世界でも珍しい蓮糸織り工房
この場所も普通では訪れない場所ですが、世界的にも珍しい蓮の糸(繊維)から作られる織物工房があるということで訪れました。蓮糸から作る織物はそもそも僧侶が身に付ける袈裟のために作られていました。通気性が良く生地も軽いため、この国の気候にはピッタリの素材です。ただ、蓮の茎1本から取れる糸はとても少なく、何千本~数万本という茎を集めなければ、織物にはなりません。一時はその効率性の悪さから製造する工房がなくなりましたが、最近はその希少価値からミャンマーの特産品の一つとして再度注目が集まり、少しずつ生産する工房が出てきたという事です。実際に織物を生産している工房を見せて頂きました。現在この村全体で蓮糸織りに取り組まれているそうで、村の人々が湖で取ってきた蓮の茎をこの民家に集め、この工房で織物に加工するというシステムです。実際に織物を触りましたが、とても柔らかく上質なものだと納得しました。
蓮糸を徐々に縒って丈夫にします
蓮糸工房の近所の家訪問
勉強のじゃましてごめんね
湖上に建つパゴダ・僧院を訪れる
真ん中のご本尊には雪だるま化した仏像が
インレー湖最大のパゴダといえば、ファウンドーウーパゴダです。ご本尊には5体の仏像がありますが、人々が仏像に金箔を寄進し、貼りすぎた為(?)、金の雪だるま状態になっている珍しい姿が見られます。残念ながら女性は本尊に入ることはできませんが、この“雪だるま”を見ることはできます。また、毎年9〜10月に行われるファウンドーウー祭りでは、このパゴダ周辺の湖上でインダー族の片足漕ぎの船レースが展開され、壮大な光景を見ることができます。一度見てみたいものです。
シュエダゴォンパゴダの楽しみ方
ヤンゴンでの見どころは、シュエダゴォンパゴダでしょう。仏陀の8本の聖髪が奉納されていると言われており、広大な境内には非常に多くの仏像や仏殿があります。眩いばかりの境内の中にいると、まるで別世界へ飛び込んでしまったかのような錯覚さえ覚えます。
さて、ここでこのパゴダの楽しみ方の一つをご案内いたします。ミャンマーには「八曜日」という考え方が根付いており、全ての人には自分の曜日があり、各曜日にはそれぞれ動物や方位などによっても表され、その人の基本的な人生や性格、他の曜日との相性などが決められていると信じられています。そこでまず、自分の生年月日から自分の曜日を調べます(調べ方は主なミャンマー関連本に掲載されています)。
シュエダゴォンパゴダには仏塔を中心に八つの方角にそれぞれの曜日の祭壇があります。自分の曜日の祭壇の前に立つと、何だか不思議と親近感が沸いてくるものです。ちなみに私の曜日の動物は鳥(ガルーダ)でした。私たちも自分の曜日の祭壇に水をかけながらお参りをし、感謝と敬意を表してきました。みなさんもミャンマーを訪れたときはぜひ試して下さいね。
聖髪が祀られている場所ま
で秘密の通路があるらしい
ピンクの袈裟を着た尼僧
長さ70mの巨大な寝釈迦像
ヤンゴンのパゴダでもう一つぜひ訪れて頂きたいのが、巨大な寝釈迦像で納められているチャウタッヂーパゴダ。寝仏にはお釈迦様の生前の姿を表す寝釈迦像と、入滅姿を表す涅槃像があります。ここに祀られているのは寝釈迦像です。この寝釈迦は見るものを圧倒する大きさですが、女性的な穏やかなお顔といい、寝ているお姿といい、私たちを温かく見守って下さっているような安心感を与えてくれます。ここでも八曜日の祭壇があるので、ご自分の祭壇の前でぜひ手を合わせてみて下さい。
年に数回寝釈迦に付いた
ほこりを払います
この女性はガルーダに長い
時間語りかけていました
ミャンマーには世界に誇るべきパゴダや寺院、豊かな自然、そして心豊かな人々がいます。見事な自然や建造物をこの目で見るのももちろん貴重な経験ですが、旅を終えていつも印象に残るのは、偉大な自然や信仰に対して、真摯に向き合う人々の姿や幸せそうな人々の暮らしであったりする事が多い気がします。今回の旅もそうでした。ミャンマーは心をじんわり温かくしてくれる豊かな国。また行きたくなる国・ミャンマーにぜひ一度お出かけしてみてはいかがでしょうか?
村の小学生たち
タナカを塗った少女
祈りを捧げる小坊主