パリのカフェにてちょっとひと息。
2013年4月28日~5月9日
文・写真●嶋田京一(東京本社)
丹羽さんとともに、チベット、ネパール、ブータン、モロッコ、ペルーといった風の旅行社ならではの地域で、自転車ツアーを展開してきましたが、今回はなんとフランスです。風の自転車ツアー初のヨーロッパ上陸、しかも自転車の本場ということで、自転車ツアー担当者として添乗してきました。
このツアーは、短期間で参加できるブルゴーニュのみAコースと、その後、アルプスのお膝元、アヌシーまで足を延ばすBコースの2部構成で企画しました。Aコースに参加された方は前半のみ、ブルゴーニュのブドウ畑をのんびり自転車で走りました。前半・後半を通して走るBコースに参加された方は、山岳コースのヒルクライムも加わり、2つの対称的なコースを走ることとなりました。
フランスなんて似合わない…という声も聞こえてきそうですが(事実、聞こえました)、さにあらず、しっかりとフランスの農村風景にとけこんでいたと思います!
そして、やってることは、東京の下町でも、チベットの農村でも同じく、わき道にそれたり、寄り道したり…ブルゴーニュのぶどう畑の農道を縫うように走り、中世の面影そのままの街角で、すれ違う土地の人に「ボンジュ~ル!」とにっこり挨拶したり、あれ? なんかフランスだからって気負うことはないんだな、と感じた旅でした。
あと、とにかく私が目を見張ったのは、地方の村々の景観です。かつて模型少年だった私の目には、いい感じの古さに仕上がった家の壁などが、模型のジオラマ(情景)の一部に見えてしかたありません。このウェザリング(模型にわざと汚れや風化具合を表現する塗装)加減がなんともいえない…などと、何気ない建物や村の風景にいちいち驚いてしまいます。また、こう言っては失礼ですが、どこかテーマパークに見えなくもない。いや、テーマパークのほうがこうした風景を模したわけですから、こっちが本家です。そこに暮らす土地の人々が守り続けてきた、歴史と伝統、それがこうした景観を保っていることに思い至ると、周囲の風景に急に深みと重みが感じられ、そこにまた感動してしまいました。
そうした感動の全てを書き尽くす筆力がないままに、報告記を書き進みます!
車輪よ、あれがパリの木だ!
鉄骨の意匠も素敵です
なにはともあれ、まずはパリを見ました。パリでは今、電動アシスト付き自転車を利用した日本人向けツアーが人気ということで、現地のオプショナルツアーに参加しました。ルーブル美術館やエッフェル塔など、有名観光地を自転車で巡ったのですが、これが楽しいのです。パリの空気をカラダで感じ、道行く人の視線を感じ、こちらも視線を返し、ときにはにっこり微笑みあったりして、観光地を巡りながらもその土地のあれこれを全身で体感する醍醐味は自転車ならではだと、あらためて自転車の素晴らしさを確認したのでした。
そして、パリといえば、マロニエ。というのが私の乏しいイメージだったこともあり、本場のマロニエ並木を自転車で走れたことに、密かに感動していたりしました。あと、プラタナスの大木も多かったです。
マロニエ並木を行く
信号待ちの合間に街並みを観察
農業国フランス
あっという間にパリを後にして、ワインの産地として有名なブルゴーニュ地方のディジョンへ。TGVの車窓には、ひたすら牧草地や畑が広がります。パリを出てすぐ、こうした北海道のような景観が続くことに驚くとともに、農業国フランスという言葉を思い出すのでした。
居並ぶTGV
パリを出てすぐにこんな景色が
雨の古城風景に感動
こんなにギリギリなの~?
ディジョンでは、まず運河をクルーズ船で移動しました。その昔、大きくて大量の物資を運ぶには、水運が頼りだったこともあり、地中海と内陸のディジョン、そしてパリヘと、フランス国内にはたくさんの運河が整備されたとのこと。その後、陸路輸送にとって代わられたこともあり、今ではもっぱら観光資源として運河が活用されていました。クルーズ後、自転車を用意して待っていてくれた、地元のフランス人自転車ガイドと合流。運河沿いの小道を、自転車でのんびりと走ります。
う~む、素敵だ
ヤドリギ多し!
小雨交じりの天気でしたが、遠くの丘にうっすらと浮かびあがる古城の景色には、心がブルルっと振るえてしまいました。なんなんだ、この童話の中から抜け出したような風景は…と、しばし呆然となってしまいました。
ブドウ畑に興奮
ほほう、これがあのワインの畑か…。
ワインは飲むけど詳しく知らない、という私でも知っているワインの産地、ブルゴーニュ。小規模な畑が多いのがここの特徴ですよ、と丹羽さんから聞いてはいたのですが、あの有名銘柄の畑が、田んぼ1枚ちょいくらいしかないのには驚きでした。すぐ隣の畑であっても、格付けの違うワインであったりするなど、ワインの世界の厳格さというか奥深さを、ブドウ畑を走りながら知ることができました。ちなみに、もうひとつの有名産地ボルドーは、こことは対称的に、広大な畑で大規模生産だそうです。
たまには撮ってもらったりして
テーマパークより凄いスキのない景観
ブルゴーニュでは、フランス人の地元自転車ガイドが同行し、ブルゴーニュワインの格付けの話から、畑ごとの特徴などを、こまめに自転車を停めながら解説してくれました。畑ごとに銘柄のプレートが付いているので、お、ここにあのワイン(銘柄)の畑が! と、ワイン通の方などは、感慨深い様子でした。
なんと500年は経つというワイン蔵
今夜飲むワインをイメージしてたりして
ツール・ド・フランスがここで!
ブルゴーニュのみコースの参加者と名残惜しい別れの後、次の目的地アヌシーヘと一行は向かいました。美しいアヌシー湖の湖畔にあるアヌシーの街を基点に、湖を1周したり、今年のツール・ド・フランスの山岳コースの一部を走ったり、モンブランを望む峠へのヒルクライムなど、気分はすっかり山岳モードに。追い越していく地元サイクリストが、バシッと決まったジャージと嫌味に思えるほどのサドルの高さに、ついつい気持ちもペース
も、散策モードから走行モードになってしまったのは私だけでしょうか。ツールの選手は、この坂をこれ以上のスピードで上がっていくのか、などと想像すると、ついペダルを踏む足も力み気味に。
気分はツールドフランス
湖畔に和みました
あれがモンブラン!
そして、振り向けばモンブラン、というはずだったアラヴィ峠。登りきった後に振り返ってみれはそこは曇り空。あの雲の向こうにモンブランが…と、誰もが心の目でその姿を思い描いた翌日の朝、快晴の空を見て誰もが思ったのは、今日ならば見えたのに…と、この一言はテレパシーのように聞こえてくるわけです。ということで、予定を少し変更して、昨日の峠まで車でちょっとだけ後戻り、さあ見えてくれよ~という皆さんの願い通り、ばっちりとその姿を見せてくれたのでした。もう、焦らさないでくれよ…。
モンブランだ!
ハイジが駆けてきそうでした
ツアーを終えてみて、もしかしたら、散策好きの人には、山岳コースはきつかったのでは? そして、山岳コース好きの人には、寄り道たっぷりのブルゴーニュは、少々のんびりしすぎに感じられたのでは? 両方楽しめるコースとして喜んでいただけたらそれが喜びでもあるのですが、このへんのところは恐らく意見が分かれるところでしょう。しかし、こんな多彩な楽しみ方があり、企画者泣かせなところがフランスの魅力なのでしょう。
フランスかぶれという言葉がありますが、すっかりかぶれて帰ってきました。
そして私のフランスかぶれは、まだまだ続きそうです。
おまけ
食事も美味しかったですし、ワインも堪能しました。自転車で巡るフランスの旅で見つけたアレやコレをここに少し紹介します。
豊富なチーズの種類
昼食風景
パリのチベット料理屋
某有名ワインのブドウはこの木になるのだ!
すみません、飲んでいません瓶だけ撮影
美味しゅうございました
ディジョンのホテル
美味しいのです
素敵でした