数年前までコーヒー党だった私ですが、カフェインを控えたくなり、最近ではすっかりお茶党に生まれ変わりました。
そんな私の旅先での楽しみの一つは、「その土地のお茶」を嗜むこと。「チャノキ」からつくられるお茶は、もともとは雲南の山奥で生まれ、西はモンゴル、チベット、ネパールからさらに西方へと広がり、東は日本列島へともたらされました。
お茶は、何千年の時を旅して、その土地の気候風土に、そして、人々の暮らしに溶け込んできたもの。お茶を知ることは、その土地の気候風土や食文化を知ることにもつながると思うのです。
例えば、先日旅してきたネパールでは「紅茶」文化が根付き、中でもミルクティやマサラティがよく飲まれます。どこでもよく見かけるのが「TOKLA TEA」のティーバック。「TOKLA TEA」はネパールのイラム地方で採れる茶葉を使った紅茶です。実はネパールのイラム地方というのは、紅茶の一大産地ダージリンのすぐ隣。国境をはさんでいるだけで、気候や地形も似ていて、おいしい紅茶が取れる土地なのです。
私はとくにマサラティ(インドでいうチャイ)が大好きです。「マサラ」とは、様々な香辛料を粉状にして混ぜ合わせた物のこと。つまりマサラティとは、スパイスたっぷりのミルクティーのことを指します。スパイスはもともと漢方薬の原料で、胃腸を活発にし、肝臓の働きを助け、強壮作用があります。
マサラとして使用される主なスパイスとその効能は、下記の通り。
●丁子(クローブ)=胃痛、腹痛に効果
●桂皮(シナモン)=体を温める
●生姜(ジンジャー)=血行促進、発汗、体を温める、消化吸収など
●小豆蒄(カルダモン)=消化促進
●桂皮(シナモン)=体を温める
●生姜(ジンジャー)=血行促進、発汗、体を温める、消化吸収など
●小豆蒄(カルダモン)=消化促進
丁子、桂皮は、内臓から温める働きを持つ作用の食材。生姜や小豆蒄(カルダモン)も温性で、余分な水分を排出する働きもあるそうです。つまり、マサラを飲むことで、内臓から体を温め、気や血液をスムーズに巡らせてくれるということ。
また、完全発酵している紅茶も体を温める性質なので、マサラティーは寒い時期にピッタリというわけです。(砂糖をたっぷり入れなければ…ですが)私は、ネパールの山中では、いつもこのマサラティを飲んで、カラダもこころもほっこりしています。
ちなみに、ウズベキスタンや中国では、食事に油が多く使われるので、油を分解してくれる効能のあるお茶を飲み、比較的暑い気候のモロッコでは、カラダをクールダウンしてくれるミントティをよく飲みます。
「郷に入れば郷に従え」とはよくいいますが、その土地で摂れるものを口にし、その土地の人々と同じように暮らすように旅していると、体調を崩すことが減るような気がしています。
お茶は、長い時間、暮らしの中での必需品として、人々の体を調え、心を満たしてきた飲み物。その土地で育まれてきたお茶は、必ずしも日本の風土に合うわけではありません。お土産として持ち帰ってきても、「あれ?こんな味だったっけ?」とちょっとがっかりすることもありました。しかし、よく考えてみれば、お茶は、旅先(その土地)で飲むからこそ美味しいはずですものね、、、。
どこでも飲めるものではなく、旅先でしか味わえないものを。その土地の水、そこに流れる空気でしか味わえない「お茶の旅」をこれからはもっと楽しんでいきたいと思います。