桜満開の便り絶えない東京の春。そんな中、私が思いを馳せているのは「極北の春」。北極点をぐるりと囲む広大な極北地域のなかでも、憧れの地は「南東アラスカ」。アラスカからカナダの海岸線にかけての入り組んだフィヨルド地形と、苔むした温帯雨林の森を有する地域です。
アラスカと聞くと、写真家の星野道夫さんを連想する方も多いのではないでしょうか。かく言う私も星野道夫さんの写真、そして文章が大好きです。自然や野生動物、そこに暮らす人々に対する優しく敬意に満ちた表現。どこか内省的な文章も、読んでいると心をしっとりと撫でられるようで、引き込まれていきます。
極北と呼ばれる地域を未だ訪れたことのない私ですが、ツンドラの大地が緩み、雪の下から小さな植物が顔を出す頃、そして温帯雨林が精気を増し始めるであろう森の空気を想像し、憧れを膨らませています。
さて、もうひとつ、南東アラスカに惹かれる理由は、その地に暮らす先住民への興味です。
既に終わってしまった展覧会なのですが、世田谷区・生活工房にて開催されていた「北太平洋と北西海岸先住民のトーテム」展の内容が素晴らしかったです。“世界は海でつながっている” をキャッチコピーに据え、7海域に暮らす人々の「手しごと」に着目したシリーズ展でした。
北西海岸先住民の生活道具や儀礼道具(装束やタペストリー、ナイフの柄やトーテムポールなどあらゆるもの)には、ワタリガラス、ビーバー、カエルやクマなど、神話に登場する動物たちをモチーフとした紋様が施されていました。それら伝承にある「動物の人たち」という表現からは、祖先に縁があり、自分たちを生かす存在である動物たちに対して、対等もしくはそれ以上の畏敬の念が込められていることを感じました。
自然環境が自分たちの命と、より直接的な繋がりを持っている地域、時代に暮らしてきた人々へと想像を巡らすことは、わが風の旅でもしばしば遭遇する、旅の醍醐味であるような気もします。
…こんなふうにして南東アラスカへの繋がりを求めている私ですが、ついに昨秋、カナダ・ユーコン準州(クルアニ、ヘインズ)〜アラスカ州南部(ジュノー、シトカ)への旅行計画を立て、航空券を発券する直前まで至ったものの…一身上の都合で計画を断念することになってしまいました。次のチャンスは、きっとあります。なぜなら、風の旅行社は極北のスペシャリストと繋がっているからです。カナダのユーコン準州やアラスカの現地ガイドである上村さん、そして企画担当スタッフのブラウン平山がいる限り、私の極北ゴールデンプランは夢では終わらないのです。
最後に、星野道夫さんの言葉をひとつ引用させていただきます。
「いつか大人になり、さまざまな人生の岐路に立った時、人の言葉でなく、いつか見た風景に励まされたり勇気を与えてられたりすることがきっとあるような気がする。」(星野道夫)
心を動かされた景色、何気ない瞬間。ひとつひとつがその人をつくる要素となり、ときには支えているのだと、私も思います。
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