風の真価が問われるのはここからです

ゼロコミッション時代の到来

「旅行会社って、航空券を販売すると手数料を航空会社からもらっていたんだね。今度、それがなくなるんだそうだ」テレビのワイドショーではそんな風に取り上げられていました。この手数料をコミッションといいます。旅行会社がノーマル航空券を販売した際に航空会社から出ていました。かつては9%、ここ数年で7%、5%と減らされついにゼロになってしまいました。アメリカが数年前から先行し、この4月から日本航空が実施したことで本格的なゼロコミッション時代がスタートしました。
実際、国内線は既にチケットレスになり、国際線もeチケットという電子チケットになりましたから、旅行会社が航空券を発券するという役割はかなり薄れてきました。現在は運賃計算もコンピューターでほとんど自動計算ですから、もう手数料は払う必要がない、というのが航空会社の論理です。
また、旅行会社は販売と集金の役割も担ってきました。しかし最近は、航空会社が自社のホームページ上で、お客様に直接販売することを積極的に行なっています。その上、集金もカード決済で出来ますから「旅行会社はもう要らない!」そんな極論まで出てくるようになりました。

やめてしまう会社も出てきました

弊社がツアーで使う航空券にはもともとコミッションはないので直接的な影響はないのですが、会社の出張などを専門に扱っている旅行会社は大変です。出張では、ビジネスクラスを使ったり帰路を自由に変更できるようノーマル航空券を使ったりします。最近は日本航空の「悟空」とか全日空の「スーパーエコ割」など、航空会社の割引運賃を使うケースも増えてきました。これらの航空券のコミッションがなくなってしまったのです。
この対策として大手を始め多くの旅行会社は、航空券一枚当たり3千円程度の手数料を取ることにしました。従来のコミッションは航空券の額に対するパーセンテージでしたから、それなりの利益がありました。しかし一枚3千円という定額の手数料では、大手はともかく会社の出張などを専門でやっているような小さな会社はやっていけません。
私の知人も長年やってきた旅行会社をついにやめてしまいました。やはりわずかばかりの手数料ではやっていけないと嘆いていました。

競争相手は航空会社

今まで旅行会社は、航空会社から良きパートナーと言われていました。しかし、航空会社の政策はたびたび変わります。旅行会社はその度に振り回されてきました。例えば、かつてジャンボジェットが導入され大量輸送時代が到来したことで、閑散期の販売をどうするかが航空会社の大きな課題になりました。旅行会社は閑散期は殆ど利益なしでパッケージツアーを販売してこれに協力してきました。
また「空気を運ぶよりは、安売りしてでも座席を埋めよう。」そんな論理で格安航空券が流通するようになりました。本来はパッケージツアー用の航空券ですから、航空券だけで販売してはいけません。しかし空席を埋めるには、バラ売りして一席ずつ販売する方が簡単だった訳です。この販売を担ったのが、 H.I.S.をはじめ格安航空券を扱う新興の旅行会社でした。
ところが先ほど申し上げたように、航空会社は旅行会社を使わず、自社のホームページでの直販を急激に拡大しています。また今年から航空運賃を決めるルールが変わり、航空会社は国際線の航空運賃を自由に決められるようになりました。ですから、幾らでも安く売れるようになったのでニューヨーク往復2万円などという驚くような料金が航空会社のホームページ上に登場するようになったのです。旅行会社の競争相手は、現在は航空会社そのものです。

本当の意味での商品力の競争時代

もはや旅行会社が手数料で生きていく時代は終わりました。旅行会社のことを一般的には旅行代理店と言います。どこの代理店かといえば、今までは航空会社の代理店を指していました。ところが、コミッションを出さないわけですからもう代理店ではありません。
しかし、私はこれは決して悪いことではないと思っています。手数料商売では、旅行会社はツアーの良し悪しで競争するのではなく、手数料を多くもらうために大量販売をすることしか頭になかったので安売りばかりしていました。ですから、随分粗悪なツアーも出回りました。空港へ行ったら席がなかったり、ホテルが取れていなかったりしたわけです。即ち、お客様の方ではなく航空会社を向いて商売をしていました。これが全く逆になります。お客様にとって価値あるものを、自分たちで作り出さないと愛想をつかされてしまいます。結果、現在は本当に創意工夫をした様々なツアーが出てくるようになりました。その意味では、本当の意味での商品力の競争の時代に入ったと思います。
弊社は今まで、旅のメーカーを自負してやってきました。コミッションなどもともと当てにはしてきませんでした。しかし、本当に弊社の真価が問われるのはここからだと思います。珍しいだけでは、優位性はありません。もっともっとこだわり続ける必要があると考えています。今年、スタッフはどんどん現地に行こうと決めています。そこからまた新しい素材を仕入れ多種多様な新しい企画をしていこうと考えています。これこそが旅作りの原点です。どうぞ、ご期待ください。

※風通信No37(2009年6月発行)より転載

シェアする